構成吟「悲運・幕末の志士たち」を披露した各会派の代表。最後は全吟者が舞台に上がりあいさつした
岩井国凉理事長による「小督之局」(写真上)と国風会の荒木国漳師による「早発白帝城」

 5流派で組織する南カリフォルニア詩吟連盟(岩井国凉理事長、国誠会)はこのほど、モンテベロのクワイエットキャノンで、第33回二世週祭吟詠大会を催し、会派の垣根を超えて親睦を深めた。吟士約60人が日頃の稽古の成果を存分に発揮し、熱吟を披露した。構成吟は、各流派の代表吟士が「悲運・幕末の志士たち」を吟じた。

 大会は初めに岩井理事長が開会のあいさつに立ち、「このように盛大に開催でき、関係者一同、多大な支援を心より感謝している」と述べた。詩吟について「漢詩の限られた文字の中に込められた『森羅万象』『人の世の摂理』『喜怒哀楽の情』を、自らの声を発して自在に表現できる」と魅力を力説した。「流派により吟じ方や表現方法に多少の違いがあるが、目指すところは一つである」と、団結の重要性を強調。最近の傾向として、詩吟に関心がない若者が増えていることに触れたが、「詩吟のよさをこれからも一層広めていきたい」と抱負を述べ、支援の継続を求めた。

錦友会の池辺剣水師による「漫述」(写真上)と国総会の本川貴美さんによる「富士山」

 次に来賓が祝辞を述べ、各人が詩吟の継承と米国で普及に努める同会の活動をたたえ、会のますますの発展に期待を寄せた。大会を後援した日本総領事館の室田幸靖総領事は欠席したため、メッセージが代読された。総領事は詩吟連盟について「各流派が戦前から受け継ぎ伝えてきた詩吟という日本文化を次の世代に残すという思いを胸に、継承に取り組んでいる。たゆまぬ尽力に深く敬意を表する」と称賛した。「一方で、詩吟の情緒と魅力を理解するには、相当の日本語力、そして日本文化への理解が必要である。若い世代や米国の方々に詩吟の理解や関心を広げていくことは、決して容易ではないが、そのような問題に対しても今大会がいい機会になることを願っている」と語った。

 吟詠は、作品名と作者名、歌詞とがスクリーンで紹介され、音楽プレーヤーによる伴奏に合わせて発表された。まず、蓮子国欽師(国誠会)の先導で南加詩吟連盟会詩を合吟し、心を一つにした。その後、各会の出場者が次々と登壇し、1部では一般会員が声高らかに24吟を披露し、日頃の稽古の成果を発揮。2部は師範が17吟を朗々と吟じ、張りのある吟声を会場の隅々にまで響かせた。

錦友会の合吟(写真上と下)。「雨中花に対す」を吟じる左から平田桂堂さん、五十嵐敦子さん、前久保慶子さん、前久保エミリーさん(写真上)と、左からハナ暁美さん、山岸あけみさん、飯塚緑さん

 大会には二世週祭女王とプリンセスが参加し、花を添えた。7人が舞台に上がり日本語を交え自己紹介し、ケイラ・チュー女王は「日本伝統の詩吟の大会に招いてもらい非常に光栄。楽しんで聴きたい」と語った。女王らに詩吟について簡単に説明した世木錦光師(国総会)は「少し難しいかもしれないが、居眠りしないように」と冗談交じりに言うと、会場は笑いの渦に包まれた。

 クライマックスの構成吟は各派から選ばれた17人が舞台に立った。ロングビーチの仏教会で行った2度の全体練習を経て大会に臨んだという。テーマ「悲運・幕末の志士たち」は、明治維新という大きな変革の時代に犠牲となった、前途ある青年たちの壮絶な生きざまを描いたドラマだ。12作の四行詩からなる構成吟は、かつて先輩会員がまとめて、後世に残された作品。1時間にわたる大作を、ベテラン吟士が熱のこもった朗詠で感情を込めて表現し、貫禄を見せつけた。

錦龍会の松本慧岳師による「月夜禁垣外を歩す」(写真上)と、国誠会の吉本国禮師による「勧学」

 岩井理事長は大会を振り返り、「初心者と中堅の若い人から、吟道50年を超えるベテランまでが、練習の成果を見せてくれた。どの朗吟も素晴らしく、皆さんがよく練習している姿が目に浮かんだ」とたたえた。伝統の二世週大会については「5流派が合同で発表する唯一の場である。流派により節回しが異なるものの、日本伝統の芸術文化である詩吟を継承する者同士が一堂に会し、切磋琢磨することは意義深い」と語った。今大会では、熊本地震の募金箱が設置され、504ドルが集まった。義援金は南加熊本県人会を通して被災地へ届けられる。

構成吟で「書懐」を連吟する国誠会の蓮子国欽師(左)と池田国豊師(写真上)と、熊本地震の募金の集計504ドルを発表する池田国豊師(左)と佐野国陽師

 南加詩吟連盟は、国風会、錦龍会、国総会、錦友会、国誠会の5会派からなる。詩吟を再認識するとともに、日系社会のみならず日米両国の友好親善に寄与することを目標に掲げ日々、稽古に励んでいる。

 岩井理事長は、南加の詩吟界の歩みについて、「戦前、戦中、戦後、そして現在に至るまで綿々と受け継がれてきた」と強調する。「まず1世が伝え、戦中の日系人強制収容所では娯楽が少なかったため詩吟が盛んに行われ、途絶えることがなかった。戦後に再開してからは、節目の大会などに日本にいる宗家を招くとともに、南加から日本の大会に参加するなどして交流を深め、研さんを積んでいる」と説明した。また、国総会のように設立22年という若い会も活発に活動していることを付け加えた。

三本締めで幕を閉じた二世週祭吟詠大会

一方で、近年は日本と同様に詩吟人口の減少に悩まされており、会員の高齢化にも歯止めがかからない。それでも、高齢会員は大会会場までの送迎を家族や友人に頼んで出場したり、杖をついて登壇したりするなどしており、詩吟に対する情熱は衰えはしない。各会派の会員は、若い日本人に会えば詩吟のよさの説明に努め「難しいように思われがちだが、練習すれば誰でも吟じることができる。うまくなれば面白くなるので、始めてみないか」などと、入会を勧めているという。岩井理事長は「詩吟は習うことと、教えることのどちらも面白いのが特徴。一生懸命に練習し、褒めて、褒められながら楽しめばいい。そして、会員を増やす努力も続けていきたい」と意欲を示した。(永田潤、写真も)

南カリフォルニア詩吟連盟の二世週祭吟詠大会で親睦を深めた参加者

Leave a comment

メールアドレスが公開されることはありません。 ※ が付いている欄は必須項目です