ペリーの要求で江戸幕府が開いた横浜港は、2年後には開港160年を迎える。毎年6月初めに開港祭が催され、横浜美術館では現在、「ファッションとアート 麗しき東西交流」と題し横浜港を窓口とした交流による影響展を開催中だ。
 私は昔、港を見ようと思い立って横浜駅で下車し、駅周辺はデパートばかりで失望したことがある。後日、現在の横浜駅は東海道本線延伸に伴って誕生したもので、鉄道開通時の「横浜駅」は今の桜木町駅だと知った。
 というわけで、港よこはま観光は桜木町駅から始まる。
 駅前からの循環バス「あかいくつ」には2ルートある。左方向は近年開発されたみなとみらい地区を回り、右方向は歴史ある港町を紹介する。
 みなとみらい地区は華やかな雰囲気に包まれている。帆の形をした大型ホテルや70階建てのランドマークタワー、刻々と色の変化する大観覧車など、絵になるものが多く、デートスポットとしても有名だ。ドックに展示されているのは帆船日本丸(初代)で、年に十数回美しい帆を広げてファンも多い。
 これに対し、右手方向は港町としての歴史がいっぱいで、古い建物も多い。食の中華街、ファッションの元町もこの一画。山下公園前に係留されているのは、かつて横浜・シアトル航路に就航していた「氷川丸」だ。
 今回、介護の合間の息抜きにと宿泊したのは、氷川丸を目の前に見るホテル。横浜は、関東大震災で街が壊滅状態となり、がれきを埋めて出来たのが山下公園。震災で外国人向けホテルも失われたため、地元実業家が協力して建てたのがホテルニューグランドだ。日本文化の粋と輸入資材で最高級ホテルを目指した姿は、今なお本館のあちこちに見ることが出来る。今年で開業90年。厚木に降り立ったマッカーサーが宿泊するなど数々の話題の舞台となった。ホテル近辺はイチョウ並木が美しく、散策すれば山下公園はバラの香りがいっぱいで、静かなひと時を過ごすことが出来た。
 みなとみらい地区をカラフルな絵本に例えるなら、こちらは重厚な歴史書といった趣き。港よこはまは、興味がつきない。【楠瀬明子】

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