2018年の日本を表す「今年の漢字」に「災」が選ばれたと報じられた。
振り返れば、地震・豪雨・猛暑・台風と、ありとあらゆる自然災害にみまわれた日本だった。身近にも被害が生じた。宮古島での挙式予定が台風の進路と重なり、ぎりぎりで諦めざるを得なかった若い知人。愛媛・肱川の氾濫で、店舗の天井まで水に浸かり、商品もすべて駄目になってしまった親戚…。家や命を失った人はもち論だが、多くの人にとって辛い事態となった。来年が、少しでも良い方向に進みだすことを願ってやまない。
ところで今月、自然災害の一つ、台風被害の跡に接する機会があった。
台風12号は7月末、いったん上陸した東海地方から九州に逆戻りする「逆走台風」となって人々を驚かせたが、熱海ではホテル食堂の窓ガラスが割れたことが報道された。一体どうしてと思いながらシアトルで日本語TVニュースに見入ったところ、海に面した絶壁にはめ込まれたように見える食堂が映し出されて納得。今度日本に行く時はあの食堂で食事してみたいとの夫の提案で、予約を入れたのだ。
ホテルは、眺望の素晴らしい熱海・錦ヶ浦に建っていた。絶壁を背にして海上に建つ建物だけに低層階は海面に近く、台風が来ればなるほど高潮、高波の被害があるかもと思われる場所だ。大波で割れたのは、高さ6メートル、幅20メートルという巨大ガラス。厚い特注窓ガラスの入れ替えは容易ではないらしく、驚いたことに、5カ月近く経ってもまだ破損個所は板で覆われたままだった。「夏までかかりそうです」とスタッフ。
台風報道をきっかけに訪れたのは私たちだけではないようで、「ここが波で壊れた部分か」と覗き込むホテルゲストが何人もいた。ホテルに大きな損害をもたらした台風には違いないが、ニュースを通じて日本のみならず海外にまでホテルの存在が知られたのは巨額の宣伝費にも匹敵しよう。「災い転じて福となす」とはこんなこともいうかと思えたのだった。
新年こそは自然災害の少ない年でありますように。そして、今年災害に遭った人々には新たな道が開けますように。【楠瀬明子】