「小学校の勉強で好きな科目は?」と聞かれたら迷わず「体育と図工!」と答える子供だった。ところが体育は「得意」だったが、図工のほうは「好きこそものの上手なれ」とはいかず…。悲しいかな、私は「ぶきっちょ」な子供だったのだ。
いつも母と開いた本があった。いわさきちひろの絵が表紙の「お母さんと私の楽しい手芸の本」という題名だったか。文化服装学院を出た手先の器用な母からは、「あなたは本当に不器用ね、お父さんの遺伝ね」などと笑われながらも、楽しい時間を過ごした思い出がある。 作ること、想像することの楽しさを知ったのは、母のおかげである。
数年前にアメリカの子供たちのあいだに旋風を巻きおこした「レインボー・ルーム」を覚えているだろうか。 カラフルな輪ゴムをLOOM(はた織り道具)で編んでブレスレットやフィギュアを作る手芸だが、私はこれに、はまった。ゴムを大人買いして、息子のサッカーの待ち時間や深夜にせっせと作った。一方、「つまみ細工」は、高価な専用はさみまで購入して意気込んだが、細かすぎて数回で挫折。成功と失敗の繰り返しだ。最近では、先ごろトーレンスに開店したペーパー・バンド・クラフト店の体験教室に行って、大いに楽しんだ。この手芸は日本が発祥だそうだが、最後に私が日本を出た2007年ごろは、まだ流行していなかったと思う。平たい紙ひもを編むのだが、数時間ですてきなカゴ型のバッグが完成。楽しかった。
どうして手を動かして物を作ると楽しいのだろう。この喜びは世界共通で、また、結果よりも経過が楽しさの醍醐味(だいごみ)だ。私の視力や物覚えの先行は分からないが、創作を愛する気持ちは一生変わらないだろう。
そんな私が、かねてから「あったらいいな」と思うのは大人向けの「図画工作の教室」。今週は水彩画、次は粘土だ、木工だと、かつて楽しんだ学校の図工や美術の時間をもう一度やってみたいと思うのだが、そんな教室は、コミュニティーセンターのプログラムを探しても案外ありそうで、ないのである。【長井智子】

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