東京生まれ東京育ちなので昔若かった頃に住んでいた東京の姿と、長い米国生活を終えて去年帰国してから見ている今日の東京とのさまざまな分野での変化や違いがよく分かる。その一つが東京の交通システムだ。交通インフラの変遷と言おうか。
今からざっと55年から60年ほど前の青春時代は学生として通学や交友で外出も増えていたので都内を動く中で首都東京は大都市であり公衆交通がよく発達しているなと思っていた。それが今日の東京を見ると交通網が量も質も更に圧倒的な発展を遂げた大都会になっているのが分かる。
昔覚えている東京の交通インフラというと、東京駅と上野駅各々から日本各地に向けて出ている遠距離線の鉄道や、私鉄も新宿などから山岳地帯や温泉地帯に出ていた中距離線とは別に、都内は国鉄(現JR)の山手線、中央線、京浜東北線の三つが都内を走り、あと都内と郊外を結ぶ国鉄や私鉄数社が走り、地下鉄は銀座線と丸ノ内線の2本、他に都内一面に路面電車の都電とバスが縦横に走るという構図だった。当時の東京も日本の他都市に比べてダン突に交通網が発達していた。欧米の大都市と比べても、本やグラビアで見ていて東京の交通システムは世界有数のレベルと知っていた。
長年住んだ米国から昨年日本に戻り現在の東京の交通網を昔と比べると、これは比較にならないほどにすごいインフラの発展と進化を遂げているのが分かる。今の東京をざっと眺めると、先ず鉄道はJRだけで20以上の路線が走っている。加えて私鉄は東武、西武、京浜急行などで約15路線、また地下鉄は東京メトロが9路線、他に都営線が4路線、これらが縦横に網の目のように交錯して走っている。外へ出る新幹線が3路線加わった。一方、昔あった都電路面電車は1路線を除いて廃止され、代わってバス路線が都バスを始め実に約35社の民間バスが都内と郊外全面を走っている。これら圧倒的に濃密な交通網で、東京のどこからどこに行くのも直行かどこかで一回乗り換えれば大体は行ける。大都会だが実に便利で楽だと思う。世界の百以上の諸都市を見てきたが東京の広大で緻密な交通システムは世界一だ。【半田俊夫】