高齢者に食べ物を届けるボランティアのジェイ・タンさん親子
高齢者の活力を支援するWPV
ロサンゼルス西地区で活動
キタバヤシ所長「つながり」を提供
美容院に行くための運転、スーパーマーケットへのお使い、家の用事の手伝い。これらは人生の小さな喜びのためにできる支援のいくつかだ。
10年ほど前にウエストチェスターで設立されたWPVプログラムは、高齢者の活力を支援することに専念する「ビレッジ」と呼ぶ草の根の自治組織で、350を超える数に成長した全米規模の運動の一部である。WPVの加盟組織の多くは、地理的条件で定義されている。例えば、ウエストチェスター地域には現在適切な公共交通システムがないので、移動のための強力なプログラムが必要になる。
「私たちの生活は自家用車に大きく依存していて、ほとんどの住民は場所から場所へと運転で移動している。ところが高齢者にはもう運転しないことを決めたり、子供たちから運転を止められたりしている人がいる。私たちの地域では、外に出て行く必要のある高齢者を支援する必要があると分かった」とキタバヤシ所長は説明する。
「私たちが基本的に提供しているのは『つながり』だ。人々、プログラム、イベント、各種の資源や他の活動グループとのつながりを提供している。『CAN(Call a Neighbor)』というプログラムがあるのだが、これは週に1回、私たちから高齢者に『もしもし』と電話をかけて、何か必要な物はないかと声掛けするプログラムだ」
パンデミックで状況一変
「テクノロジー」必要に
だが、これらはすべて新型コロナウイルス以前の話。3月16日の週に状況が一変した。
「対面でのプログラムやイベント、YMCAへの外出など、すべてをキャンセルしなければならなかった。この日のことはこれからも決して忘れないでしょう」
「当時は65歳以上がウイルスに対して最も脆弱であるということについても多くの議論があった」と彼女は回想する。「私たちは無料でサービスを提供することに決めたのだが、それでもすぐに、参加を希望するボランティアからの応募が殺到した」。思いやりのレベルは高く、4月までには新しい200人のボランティアを精査して訓練した。
パンデミックによる制限で、人々が行くことができる場所や、会える人の範囲が限定されるに連れて、「つながり」の必要性がますます高まった。75歳以上の87%がオンラインの環境を経験したことがないという2018年のユーロスタットの調査がある。キタバヤシ所長は、コンピューターやiPhoneだけでなく、テキストメッセージやEメール、ソーシャルメディア、Skypeなどの世界を高齢者に紹介する時期が来たことを実感した。
「電話を通じて、テクノロジーの講習を始めた。ズームとフェイスタイムの使用方法を人々に教えたことで、パンデミックが始まってから初めて、高齢者が家族や友人とつながることができるようになった。NetflixやHulu、テレビや映画ストリーミングのセットアップも支援した」と話す。
人とのつながりが重要
「誰かが来るのが楽しみ」
キタバヤシ所長は、グローバルフォーチュン500企業の人事担当役員として磨き上げた問題解決スキルを生か
キタバヤシ所長が最も満足する瞬間は、WPVが高齢者の家族から感謝の言葉を掛けられた時だ。家族の多くは近くに住んでおらず、WPVがあることで両親や祖父母が孤独でもなく忘れられてもいないことを知って安心するのである。
キタバヤシ所長の活動は止むことがない。最近も高齢者が必要とする新品または中古のiPadを9月30日までに50台収集することを呼び掛けた。高齢者が新しい技術を学ぶ段階に入っていることは間違いないようだ。
高齢者にパソコン教える
SFVJACCのタカヤマさん
視覚に訴え、分かりやすく
一方、高速道路405号線の北端地域では、教育者のナンシー・タカヤマさんが、数年前にサンファナンドバレー日系米国人コミュニティセンター(SFVJACC)で高齢者向けのコンピューター・トレーニングプログラムを開始した時、どのように支援したかを振り返った。彼女は、特にこれまでにコンピューターに触れたことのないお年寄りに教える場合には、少し忍耐が必要であることを認めている。
デジタル時代に成長した若者にはコンピュータースキル、インターネット、ソーシャルメディアなどは簡単に伝わるが、高齢者にとってコンピューターは、恐ろしいものと感じられることがよくある。ピュー・リサーチが実施した調査によると、高齢者の77%がスマートフォンやタブレットの使い方を学ぶときに助けが必要だと言っている。さらに、多くの大人はソーシャルメディアを信頼せず、ファイスブックやインスタグラムなどのソーシャル・ネットワーキング・サイトを使用せず、グーグル検索やインターネットサーフィンにも慣れていない。
67歳以上の高齢者の96%が携帯電話を所有しているが、スマートフォンはそのうちの半分に満たない。それでも、64〜74歳の高齢者の約83%が、少なくとも週に1回はインターネットを使用していると答えている。
タカヤマさんは最近、ウインドウズやエクセルなどのプログラムをナビゲートする方法を高齢者に教えている。講習のほとんどは電話で行われる。「時々、彼らは欲求不満になり、彼らが愚かだと思うところまで行くかもしれない。でも私は、視覚に訴えると高齢者に分かりやすいと発見したので、そのコツを自分の教授法に生かしている」
現代テクノロジーで「つなぐ」
キタバヤシ所長とタカヤマさん
高齢者の健康促進にも寄与
キタバヤシ所長とタカヤマさんは、テ クノロジーで高齢者をつなぐことで、高齢者の福祉を強化しているのかもしれない。現代のほとんどのテクノロジーは、見る、聞く、読む、の能力に依存している。つまり、身体機能の衰えによって、コミュニケーションの機会を逃している一群の人々がいる可能性がある。高齢者はタッチスクリーンに対してさえ混乱することがある。だが、タカヤマさんは今も気後れすることなく、高齢者に紹介するプログラムのリストにパワーポイントを追加した。
タカヤマさんは楽しみのために、サンファナンドバレー日系米国人コミュニティセンターの新旧の友人が料理のヒントやその他の情報を共有したり、ゲームをしたり、チャットしたりできるZOOMによる会合の開催を支援してきたが、このようなタカヤマさんの活動は、技術を教えることで高齢者の健康的な転換に功績をもたらしていると言えるかもしれない。
なぜなら、脳の健康に関する世界評議会は、社会への関与が思考スキルを維持し、認知機能の低下を遅らせるのに役立つ可能性があることを示唆している。他の研究は、活発な社会生活を、健康上の利点の中でもとりわけ心臓病の予防や免疫力の向上に結びつけている。
エレン・エンドウは生涯ジャーナリストであり、羅府新報との関係は40年近くにおよぶ。全米誌とABCテレビネットワークのために執筆してきたほか、小東京のコミュニティリーダーとしても活躍している。