スクリーンに映し出された國米選手の演武

 空手形の米国代表、國米櫻選手が4日、悲願の五輪初出場を果たした。小東京のテラサキ武道館では、同館で空手の指導をする國米選手を応援しようと、パブリック・ビューイング・イベントが行われた。OA機器を寄贈したパナソニック・ノースアメリカ社との共催。約50人の参加者が國米選手の演武を緊張した面持ちで見つめ、大きな拍手を送った。 
 同館を運営するリトル東京サービスセンター(LTSC)のサービスプログラム部部長マイク・ムラセ氏は、試合開始を前に「東京と小東京の両武道館が中継でつながった」と喜びを表し、國米選手の登場を心待ちにしていると語った。
 ライアン・リー館長の司会でイベントの開会が告げられ、パナソニック・ノースアメリカ社グローバルイニシアティブ担当の小杉卓正氏、松林流小東京のアート・イシイ師があいさつに立った。

スクリーンに映し出された國米選手の演武

 國米選手は予選A組で登場。「チャタンヤラ・クーサンクー」と「パープーレン」の形を演武した。記録を25・75とし、3位で準決勝進出を決めると、場内からは「おお」という声とともに大きな拍手が沸き起こった。日本代表の清水希容選手を含む予選B組の演武が終了し、続く準決勝。スペインのサンドラ・サンチェス、香港の劉慕裳(りゅう・ぼしょう)両選手との対戦では、形名「チバナノクーシャンクー」を気合い十分に演じた。惜しくも決勝進出はならず、3位決定戦でイタリアのビビアナ・ボッタロ選手に敗れた國米選手は、順位を銅メダル2人に続く5位とした。金メダルはサンチェス選手、銀メダルは清水選手がそれぞれ獲得した。
 メダル獲得はかなわなかったが、初めて五輪種目になった空手で米国代表中唯一の女性選手として出場し、さらにアジア系・日系を代表する一人だったことを踏まえると、國米選手は記録以上に貴重な記憶をコミュニティーに残したと言える。
 空手を7年ほど習っているキーレン・ミリガンさんは「日系人、米国人、そして空手をする一人として、櫻選手のオリンピックへの挑戦はとても意義深いことと思う」と述べた。 
 今回使用された大型スクリーンとOA機器は、國米選手とパートナーシップ契約を結ぶパナソニック・ノースアメリカ社から今年初めに寄贈された。

パナソニックと國米選手からの機器寄贈を記した楯を紹介するリー館長(左)と同社の小杉氏

 米国のミレニアム世代にパナソニックブランドを広く知ってもらうため、新旧の五輪アスリート4人と契約を結びチーム・パナソニックを結成。社員とアスリートがともに東京2020大会を目指して進んできた。同社でオリンピック・パラリンピック・マーケティングを長年担当する小杉氏は「パナソニックを象徴するアスリートとして、できればアジア人に声を掛けたいと思っていた」と國米選手とのつながりを語る。「競技を続ける過程で地域の人々に助けられた」と感じ、「空手界へ恩返しをしたい」と語る國米選手とは社会貢献への思いが一致する。小杉氏は「テラサキ武道館がコミュニティーの中心となることに期待を寄せ、國米選手とつながりの深いこのテラサキ武道館に機器を提供した」と述べた。 
 空手競技の合間、松林流小東京とガーデナの修業館の生徒らが形を披露した。
 会場の一角では、小東京の日本食レストラン「AZAY」が各種弁当を販売し、来場者の空腹を満たした。
【麻生美重、写真も】

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