現実社会で、犠牲者を埋葬する映像から反戦気運が高まったせいか、「ひまわり畑の下にはたくさんの兵士や農民が埋まっている」という衝撃的なせりふで有名な名画、「ひまわり」(1970年)の上映が日本で増えているそうです。この映画に出てくるひまわり畑は、ウクライナのヘルソン州で撮影されました。主演のソフィア・ローレンが、広大なひまわり畑の中で夫を探すシーンに、ヘンリー・マンシーニの甘く切ない曲が重なります。第2次世界大戦で引き裂かれた悲運の愛を描く作品に涙した方も多いと思います。「戦争に勝者はいない」という真理を半世紀以上も前に学んだ人類は、残念ながら同じ過ちを犯しています。
 テレビではウクライナ人女性が、ヘルソン州に侵攻してきた孫ほどの年齢のロシア兵に対して、「あなたのポケットにひまわりの種を入れておきなさい。あなたの死骸からやがて、ひまわりの花が咲くだろう」と叱責(しっせき)する映像が流れました。高精度の軍事兵器に対して、さらに殺傷能力の高い武器で戦うということは、お互いの家族を引き裂き、悲劇を増加させるだけです。武器にはひまわりの種で抵抗したいという気持ちが、深く心の中に伝わるメッセージです。
 阪神大震災で亡くなった少女の自宅跡に咲いたひまわりの種が、東日本大震災や熊本地震の被災者に贈られ、復興の象徴とされたのも人々の記憶に新しいと思います。震災で心の支えになったのもひまわりでした。ひまわりは、まぶしい太陽から目をそらすことなく、上を向いて咲き誇ります。それが勇気や希望につながるのかもしれません。
 平和や平等が当たり前の時代に、一方では古い時代の占領や攻撃の理屈がまかり通っている不合理さに憤りを感じます。遠い国での現実を前に、何もすることができずにいる自分自身をふがいなく思うこともあります。誰もがいや応無しに「戦争」とは何かを考えさせられています。本当は、脅迫や暴力で得られるものは何もありません。ひまわりはウクライナの国花です。そして侵略され続けてきた歴史の中で、抵抗のシンボルになっているのです。(朝倉巨瑞)

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