エンゼルスの試合観戦者に昨季、大谷が受賞したア・リーグMVP記念ボブルヘッド人形が配られるということで、友人を誘っていざ球場を目指した。先着2万5千人に限られたため、われ先にと足早なファン。人形を手にした大の大人が童心に返って大喜びする姿は、自分を鏡で見ているようにも映り、ちょっぴり恥ずかしくなった。
 試合前にはMVP受賞のセレモニーが行われた。そう、記念人形はこの日のためのお祝いと分かった。球団オーナー、監督、GMのお偉方が勢ぞろいしお膳立てが整ったところで、大歓声を浴びながら千両役者のお出ましだ。
 式典では昨季の投打の「二刀流」で活躍した勇姿が大型スクリーンに映し出される。数々の受賞について紹介したMCは、オールスターでの先発登板とDH(指名打者)での出場を強調し、テーブルの上に林立するトロフィーに「わずか1シーズンでこれだけの賞を取った」とたたえた。電光掲示板の数カ所には日本語でも「大谷翔平 2021アメリカン・リーグ最優秀選手」と表示され、興奮したファンは「MVP! MVP!」と連呼。日本人としてこの上ない喜びを感じた。
 この日の試合では、期待された大谷のメジャー通算100号本塁打は惜しいところでフェンスを越えず翌日に持ち越しとなったものの、ファンは、新たな歴史的瞬間の目撃者となった。弱冠22歳のデトマーズ投手がノーヒッターの偉業を成し遂げたのだ。最終回、マウンド一点に観衆の目は集中。初めて経験した劇的な場面に、「一挙手一投足」や「固唾(かたず)を飲んで」などの表現がこのようなシーンにぴったりと合うことを身をもって知った。
 日本ではロッテの20歳佐々木が先月、完全試合を達成し、その次の登板でも八回まで完璧に抑えた。触発されたという大谷はパーフェクトをする勢いの好投を続けている。西地区首位のエンゼルスと大谷は、この日の同僚の偉業に刺激を受け、さらに勢いを増すことだろう。
 家路に向かう車の中で「たった20ドル払って大谷の試合を見て、人形をもらって、ノーヒッターまで見られるとは」と、感激の余韻に浸れば、いつもの渋滞など何のその。大谷のチームの本拠地である南カリフォルニアで暮らしていることへの喜びをかみ締めた一夜となった。(永田 潤)

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