今年1月、映画「パーフェクトデイズ」を日本の映画館で見た。故小津安二郎監督を崇拝するビム・ベンダースが監督を務め、カンヌ国際映画祭で男優賞を受賞した役所広司が主演した話題の作品だ。主人公は地味極まりないトイレの清掃員。
 日本では、トイレは臭い・暗い・汚いがそろった3Kの代名詞だが、そんな醜悪イメージの公衆トイレを嫌な顔一つせず、毎日、当たり前のように清掃していく。その姿は見ているだけですがすがしくなる。
 トイレが3Kというが、消臭しないから臭くなるわけだし、掃除しないから汚くなるだけで、照明で明るくすれば決して暗くない。そんなイメージを植え付けるから、トイレの清掃員なんて誰もやりたがらないのだろう。
 人間は賢いのか怠け者なのか、最近はテクノロジーの発展も手伝い、トイレ掃除を含めた3K(きつい、汚い、危険)労働はロボットにやらせる傾向にある。機械なら文句も言わず仕事をこなしてくれるし、しかも、疲れることがない。臭いものにはふたの精神か。
 そんなある日、仕事のリサーチで某俳優のプロフィールが目に止まった。生まれた年は違えども、自分と同じ誕生日で親近感が湧いた。しかし、それよりも驚いたことがあった。その人の趣味・特技の欄に「掃除」と書いてあったことだ。普通の人なら読書や旅行と書くところだろう。正直、掃除が趣味なんて聞いたことがなかった。そこで思った。僕もこいつを趣味にしてみようと。
 単純な僕は、この斬新なアイデアがすっかり気に入り、以来、掃除を好きになろうと、トイレ、お風呂場、台所など、部屋の隅々を見るようになった。そしたら、汚れているところ、ほこりがたまっているところが多いこと多いこと。自分も臭いものにふたをする類の人だったのかとプチ反省。
 今は気持ちを入れ替えて毎日短い時間でも欠かさず掃除をしている。掃除することは労働だが、終わった時の達成感は大きく、きれいになると気分も良くなる。職にあぶれたらみんなが嫌がる清掃員の仕事もできるじゃないか。クールで、気持ち良い、快適な新しい3Kを心がけて。(河野 洋)

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