「日本語で作歌することが日本人である自分の輪郭を縁取り直すような働きもしているのではないだろうか」
海外に永住する人たちの短歌に共通する傾向を、歌人の小塩卓哉氏はこう指摘する。母方の親類がロサンゼルス近郊に住み、移民やその子らの心情というものを身近に感じてきた人ならではの弁だ。例えばこんな歌。
「ブロークンの英語と手真似で生きてきた吾にも小さき移民史があり」
自分の異国での半生を「移民史」と捉えようとする自恃が伝わる。
そうした短詩型文学の意義を広く知ってもらおうと、海外日系新聞放送協会が2004年に「海外日系文芸祭」を始めた。小塩氏の提案だった。文芸祭は海外詠の面白さをもっと日本の人たちに知ってもらう狙いもあった。短歌と俳句の二つの部門で13年まで10回開催。応募作品の国は米国やブラジルはじめ、カナダ、メキシコ、パラグアイ、アルゼンチン、フィリピン、タイ、インドネシア、ブルガリア、そして日本と多岐にわたった。
その小塩氏が11月10日、横浜のJICAで「横浜短歌合戦」を開催する。同氏が客員教授を務める中京大学の学生らとともに企画し、海外日系新聞放送協会らが後援している。当日の趣向は、参加者がチームを作り、学生が選んだ海外移住に関わる秀歌および今回の応募で選ばれた入選作・合計20首ほどの短歌の中から自分たちの推す短歌を選び、選んだ短歌の魅力のアピール合戦をするというものだ。10月20日まで新作の応募を受け付けているから、ロサンゼルスからも応募する人が多くいるのではないだろうか。応募と当日の参加は無料だ。
過去の海外日系文芸祭では異国に住む日本人のアイデンティティーを託した数々の作品が寄せられた。
「われ移民さくらさくらとうたえどもはなびらあびる夢にとどかず」
「そのかみの移民の亡母(はは)の牡丹刷毛かすかなれども紅の匂ひす」
今回のイベントでもそうした歌が多く寄せられ、海外詠に対する理解が深まることを期待したい。(長島幸和)
