仕事上、北米制作のドキュメンタリー映画をたくさん鑑賞する。動物テーマものが個人的に好みだ。そして時折、英語と日本語の動物名を見比べて、困惑、仰天する。
例えば、中南米に生息する「ナマケモノ」。動作がゆっくりだが、あまりにもストレート過ぎる名前では?「怠け者」? 人間の基準で一方的に断定するネーミング方法に異論。かわいそうに思えてならない。例えば「ユッタリネ」とか「ノンビリモノ」に変名はどうか? いや待てよ、これって「生(なま)」の「獣(けもの)」かな…?と思って調べたが違うようだ。
この「獣」は、毛のはえた四つ足で歩く哺乳類動物の「毛物」から由来したらしい。「獣」は「けだもの」とも読むが、本能のままに行動する欲望むきだしの野獣の意味を持ち、残酷で非情な人間を比喩表現する時もある。
というわけで「ナマケモノ」とはイメージがかけ離れる。実は「ナマケモノ」にはちゃんとした漢字名がある。当て字の「樹懶」だ。「ナマケモノ」という動物は約1週間に1回のペースで排泄のために地面に降りるらしいが、それ以外は1日中「樹」にぶら下がって過ごしている。「懶」は「らい」または「らん」と読み、怠る、怠ける、だるい、面倒くさい、の意味を持つ。
英語では「Sloth」(スロース)だ。古記英語の「Slou」や「Slowe」の名詞形で「怠け」の意味だ。現在使われている「Slow」(ゆっくり、遅い)の語源でもある。つまり「ナマケモノ」は、英語からの翻訳名か? もしくは、双方とも別個で考案したら、くしくも結局、同じ名前にたどり着いたのか?
漢字の表現があっても学術的には区別化のため、動植物名は基本カタカナで表記するようだ。
遺伝的研究によると、そもそも「ナマケモノ」の祖先の方が人間より古くから地球に存在する。欧州には生息せず、中南米に生息していた。つまり、いわゆる学術的視点から存在が知られるようになったはヨーロッパ人の探検隊がそこへ渡ってからである。本格的な研究が始まったのは、1971~77年にパナマに常駐した米国人のジョン・エイゼンバーグ動物学博士によるものだ。
「ナマケモノ」の研究の歴史はまだまだ浅い。彼らもさぞかし「スローだね」と痛感しているに違いない。(長土居政史)
