【長島幸和】 大リーグは今プレーオフで沸いている。日本人選手も何人か出場しているが、ふと、この中から米国に長い間暮らしていくことになる選手が何人出てくることだろうと思った。メジャーOBの野茂氏や松井氏、そしてイチロー氏も米国に居を構え、そこを拠点に活動している。もちろん、日本に帰っていった選手も大勢いた。
 考えてみたら、日本からの初期移民の大半は「故郷に錦を飾る」だった。学業を究めるにしても、賃金を稼ぐにしても、そうだった。それは次第に変わっていったが、その理由について在米ジャーナリストの鷲津尺魔はその著書「在米日本人史観」(1930年)の中で「米国に長く留まるに従って、この国に興味を持つようになったことと、結婚して米国生まれの子どもを持つことによって心理的に変化を来したことである」と簡潔に述べ、その上で「それに伴って99%の人たちが、帰るべきか帰らざるべきかと自問するようになった」と言うのである。
 その後、時代は変わったが、米国に暮らす日本人がこの自問を抱き続けたのは間違いない。移民法が大きく変わりつつあった1980年代、小東京にあった「新一世の会」では、移民法について専門家を招いて解説してもらったり、日系人戦時強制収容所跡地への巡礼に参加したりしながら、永住か帰国かを仕事や教育の問題と絡めて話し合っていた。
 現在はどうか。日本では今や在留する外国人が340万人を越え、国際結婚する人も増えて、外国への意識が変わってきた。少なくとも最近日本から来る人たちが以前の人たちとは異なる意識を持っているのは確かだ。それでも多くの人が少なくとも1度や2度は、米国に留まるか日本に帰るか悩んだことがあるのではないだろうか。
 大リーグに挑戦するために渡米した日本人選手も、野茂氏以来70人に上っているが、それぞれプレーしながら、どこまで、いつまで米国で挑戦するか考えたであろう。
 ちなみに尺魔は「少数の専門的な仕事に就いている人などを除いて、われわれはすでに日本という国にとって無用の存在となってしまっているのだ」と、長く米国に留まっている場合に起こり得る「定め」を説いていた。(長島幸和)

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