雨続きのシアトルだったが、桜祭りの催された週末は久しぶりに晴れ上がった。「シアトル桜祭・日本文化祭」は、米国建国200年を祝って1976年に三木武夫首相から千本の桜がシアトル市に贈られたことで始まり、今年で第50回を迎えた。
会場シアトルセンターは、62年に半年にわたって催された世界博の跡地。当時建てられたスペースニードルやサイエンスセンターなどの他、グラスアート美術館やポップミュージック博物館、アリーナなどがあり、観光客も多い。
桜祭りでは3日間、ステージでのデモンストレーションや展示、ブースなどで、日本の伝統文化だけでなく、シアトル日系コミュニティーや日米交流の様子なども紹介している。
人に会うことの少ない日常なので、会場で知人に出会うとおまけをもらったような思いだ。書道を指導する若い夫婦に初めて会ったのは30年ほど前、和太鼓指導の若夫婦とは20年ほど前だろうか。他の土地から来たばかりだった彼らがシアトルに根を下ろし、今では多くの弟子を率いて桜祭りに欠かせない存在になっているのを見るとうれしい。知人に声をかけられ、娘が空手プログラムでステージにとか、孫が太鼓で出演中と聞くと、舞台上の姿を一緒に追っている。
目を細めることばかりではなかった。久しぶりで会った人と「お元気でしたか」とのあいさつを交わせば、「近いうちに母の介護でまた日本行きです」と近況報告となる。これまでと違い今回は、数人から「無事に帰って来れるといいですね」と言われ、ドキリとする。入国管理が厳しくなるのではと心配してくれてのことだ。確かに今、米国では多様性の問題も環境問題も貿易もこれまでの進展は否定され、反対方向に進み出そうとしているように見える。まるで「回れ右」とも思えるこれら政策までを、米国民は本当に選択したのだろうか。
シアトルセンターでは年間を通じて、コミュニティーの多様性文化を祝う「シアトルセンター・フェスタル」を開催しており、桜祭りはその25のプログラムの先駆けとなった歴史を持つ。時代が逆行しないことを願うばかり。
シアトルでは今、満開の八重桜が美しい。(楠瀬明子)
