【楠瀬明子】 宿泊中のホテルの部屋からは、湖に浮かぶスワンボートがいくつも見える。「ベトナムに遊びに来ませんか。ガールフレンドにも会ってください」と、夫の教え子から連絡が入り、若い2人に会う旅を計画。母の介護のためにシアトルから福岡に向かい103歳の誕生日を祝うと、数日間の留守を妹に頼んで福岡からハノイ直行便に乗ったのだった。
異国での驚きは、空港からホテルへの道で始まった。まずは、自動車をはるかに超える数のモーターバイク。鶏が3羽、荷台に脚をくくられて揺れている様子には目が点になり、羽を広げたクジャクのように大きな発砲スチロールの箱を縦横に10ほど積み重ね、車の流れの中を器用に走るバイクには、感嘆の声しかなかった。
数日をハノイで過ごして印象に残るのは、若い人々の多さと笑顔、それに食事のおいしさだ。心配していた食事は、どこのレストランもやさしい味付けで、米国で食べるベトナム料理よりも食べやすい。とりわけ、フルーツ大好きの夫は、ドラゴンフルーツ、ジャックフルーツ、ドリアン、グアバといったエキゾチックフルーツをたっぷりと楽しんだ。郊外ではバナナやパパイヤ、マンゴーの木がどっさり果実をつけていた。
バイクはハノイ中を走っていた。時には2人乗り、親子3人乗りで。交通信号のない交差点を自動車とバイクの波が縦横無尽に通り抜けていく。人々はその間をかいくぐって道を渡るのだが、私たちはホテル前の交通量の多い道を横切る自信がなく、4日目にようやく渡れるようになった。
教え子は、留学先の日本からベトナムに戻って2年。それだけにいろんな課題が見えている。「ベトナムは若い国で、人口も増加中です。電車などのシステムが完成しない限り私たちはバイクを利用せざるを得ないけれど、既にスモッグや渋滞で大変です。日本の40年前に似ていると言われます」。
うん、うん。ロサンゼルスもかつてはスモッグが多かったことを思い出した。
教え子とガールフレンドは結婚を決めたようだ。若いカップルが今後築く家庭のためにも、1日も早くハノイに青空が戻ることを願っている。(楠瀬明子)
