
着物を着る機会はあっても、「帯結びが難しい」「時間がかかる」と感じる人は少なくない。そうした悩みを解消する「作り帯」の教室がこのほどロサンゼルスで始まり、日本から専門講師を迎えた第1回ワークショップが開かれた。実用性と文化継承の両面から注目を集めている。
ワークショップを開講したのは、ガーデナでニットソーイング教室「ダイヤモンドスペース イージーニットソーイング」を15年以上運営する金子吏佳(りか)さん。洋裁指導から出発し、日系コミュニティーのニーズに応じて子どもクラスや和装分野へと活動を広げてきた。

今回の企画は、日本で「帯を傷つけない」独自の作り帯の普及に取り組む「和らく会」(本部・大阪)との連携により実現した。金子さんは昨年、日本で講師育成コースを修了し、このほど米国初の認定講師となった。これを機に、東京支部の片山敏子さんを招き、アメリカでは初となる2日間の講習が行われた。片山さんは東京支部の立ち上げにも関わり、講師育成を担う指導者である。
参加者の多くは茶道や日本舞踊などに親しみ、普段から着物を着る機会がある女性たち。そのため帯結びの難しさも実感してきた。片山さんによれば、難しい理由の一つとして家庭にある帯の1本1本は、長さ、厚み、柄などが異なり、二つと同じ帯がない。そのため「結びやすい帯」と「結びにくい帯」が出てくる。今回、参加者が体験製作のために持参した帯もそれぞれ、夏物、冬物、ワンポイント柄などさまざまだった。
講座ではまず、作り帯の仕立てにおける「見立て」の重要性が強調された。背中の中心を基準に柄の位置を調整し、最も美しく見えるバランスを探る工程だ。特にワンポイント柄の帯では帯締めとの関係も含めたセンスが求められる。この「見立て」の作業により、「柄が出ない」「長さが合わない」といった手結びの悩みを解決できるという。その後、2人の講師の指導の下、約1時間で帯を完成させ、帯を胴に巻きつける着装指導の段階へと進んだ。製作の工程は手縫いで、数カ所を糸でとめていく。難しい技術は不要。帯を切ることはなかった。

受講を終えて、参加者は実用性の高さへの驚きを示した。参加者の1人、パートス幸恵さんは、今回、ピンク色の袋帯を持参。お茶を習っており、お茶会の機会には着物を着るが、「帯に時間がかかるのが悩みだった。短時間で形になることに驚いた。次のお茶会が楽しみ」と話す。同じく参加者のホーストマン洋子さんも、「帯は10分でできる時もあれば、1時間かけてもできない時がある」と帯結びの難しさを話し、「これは体型に合わせてぴったり仕上がるのが魅力。帯がうまくいかないと出かけるのが嫌になることもあるが、これなら安心」と笑顔を見せた。
片山さんは「作り帯は、柄が出ない、長さが合わないといった悩みを解消できる実用的な技術。文化を支える一つの形として広げていきたい」と今後の普及に期待を寄せた。
普段から着物に親しんでいる人にとって「付け帯」自体は珍しいものではないが、その多くは胴と背の部分が分かれた二部式である。高級な帯や思い入れのある帯を切ってしまうと元に戻せず、体型の変化に合わせたり、将来、誰かに譲り渡したりすることも難しくなるため、大切な帯ほど手結びになりがちだが、「切らない」方法はそうした課題を解消する技術として注目される。

英語での指導も可能だが、「これまでの経験では、学校のカリキュラムに家庭科教育のない米国で育った人の場合は、針の持ち方から始める必要があることもある」と金子さん。講師として製作方法の普及を主眼とする一方、仕立ての依頼にも対応する。
将来の目標については、「私自身がいずれは日本に帰ることも考えているので、こちらで後継を育てたい。資格を持つ講師を増やし、きちんとした形で根付かせたい」と語る。今回のワークショップは満員となり、関心の高さが示されたことから、5月以降に講座を本格化させ、今後は個人レッスンやレベル別講座の展開を予定する。
着物を着るハードルを下げる実用的な技術として、「切らない」作り帯は、米国で着物文化を次世代へとつなぎ、より身近なものとして根付いていく可能性を秘めている。
「ダイヤモンドスペース・イージーニットソーイング」の問い合わせはテキスト310・702・2586、またはメール—
diamondsewing@yahoo.com
(長井智子、写真も)
