ある夕方、アナハイム通りの街角から、大音響のマリアッチ音楽が聞こえてきた。次いで車窓を流れる風景に、ふいに「馬」が見えた。騎馬警官の安全教室か何かだろうか。目立たない店が並ぶだけの、変哲もないストリップモールの駐車場なのだが。
 日曜に通るたび、同じ光景を目にした。ついに好奇心を抑えられずUターンすると、音楽に合わせて踊る馬たちがいた。面食らったが、友人によると、メキシコの伝統騎馬文化「チャレリア」というものらしい。
 何度か足を運び、テントで売っているタコスも食べてみた。なぜここで馬を見るのかという不思議は、これほどのショーがひっそり無料で行われている驚きに変わった。隠された財宝を見つけた気分だった。
 ついに主催者に声をかけた。テントはウィロー通り沿いのメキシコ料理店が出し、一座は依頼があればイベントにも出向くと分かった。しかし会話はスペイン語。マリアッチも大音量で、それ以上は多くを聞けない。その日は4頭の馬が登場した。前髪を激しく振ってみせたり、3拍子に合わせ正確に足を踏む馬もいる。タコスと緑色のジュースを夕食にしながら、ショーを楽しんだ。
 帰宅して調べると、ロサンゼルス・タイムズの記事を見つけた。この集まりは「エル・ショー・デ・ロス・カバジョス(馬のショー)」と呼ばれ、2022年から毎週日曜に開かれているそうだ。主催者のグアダルーペ・ペレスさんは、馬上でランチェラ(メキシコの伝統的な大衆音楽)や自作の歌を披露する。移民の仲間と故郷のチャレリア文化を受け継いでいるという。刺しゅう入りのスーツとソンブレロ帽をまとって馬術と歌を披露するパフォーマーは「チャロ」と呼ばれる。
 馬たちは3マイル離れたロサンゼルス川沿いからやって来る。そこには住宅地でありながら、馬の飼育が特別に認められた一角が残る。日曜になると、馬はトレーラーで運ばれるか、チャロが乗って街を進み、駐車場に集まるという。その文化と馬と暮らす人々の日常が、日曜の街角に姿を現していたわけだ。ミステリーは解け、チャロの人々との距離が縮まった。
 こんなすごいものを埋もれさせたくない。もっと多くの人にも見てほしい。次回はタコスとビールかな。
 住み始めて1年たった今も、ロングビーチは街角に思いがけない驚きを隠している。(長井智子)

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