大リーグが今季から本格導入したロボット審判の「ABS(自動ボール・ストライク判定)」がおおむね良い評価を得ている。各チーム1試合につき2回の判定に異議申し立て(チャレンジ)ができて、成功した場合に限り権利が保持できる。統計によると、5月時点でのチャレンジ総件数は2160件で、そのうち1145件が成功し判断が覆された。チャレンジ成功率は53%で、人間の審判の正確率の高さも改めて示された。
高性能カメラや人工知能(AI)など複数の先端技術を集結させたこのABSは、人間による審判を支援しつつ判定の公平性を向上させ、時間の短縮や退場処分の減少に一役買っている。その他にも、2022年のサッカーW杯で「三苫の1ミリ」を生んだ「VAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)」、テニスやバレーボールの電子判定システムなど、スポーツ界におけるデジタル技術の導入は著しい。
しかし、ABSのようにテクノロジーの導入が成功することもあれば、害になる場合もある。米国では、AIの「チャットGPT」が犯罪を助長したケースが相次ぎ報告されているし、メタは先月、子どものSNS利用をめぐる訴訟で180億ドルの和解金支払いに合意した。そして今、AI開発が人類に及ぼすリスクに専門家は警鐘を鳴らし始めた。
私にとっての「害」はAIの翻訳ツールだ。便利だけれど、一回使うと10日分の読解力・書く力・創造力が劣化してしまう感じがして注意している。
日本の母から先日、人間の赤ちゃんと猫が一緒に仲良く遊ぶ動画が送られてきた。その動画は生成AIだと伝えると、びっくり仰天し、「こんな賢い猫がいるのだと感心して見ていた」と言う。凄まじい勢いでAIが浸透する今、登場する人間が全て生成AIというテレビコマーシャルも増えている。一見気付きづらい精巧さだが、見分け方はその完璧過ぎる出来栄えだ。これらの生成AIに囲まれながら私は、ヒト特有の不完全さ、「インパーフェクション」の魅力を再確認している。
治安や医療など、AI技術に期待する分野はたくさんあるが課題も山積する。そして相撲ファンの私としては、軍配に物言いがつき親方衆が土俵上で協議する時の緊張感が好きなので、相撲界にロボット審判が導入されないことを願っている。(平野真紀)
