
映画監督・プロデューサーのジョージ・ルーカスと妻で実業家のメロディ・ホブソンが、構想から16年、10億ドル以上を費やした「ルーカス・ミュージアム・オブ・ナラティブ・アート」が、ついに完成し、今月22日に一般公開が始まりました。私は一足先に、関係者プレビューで見てきました。
まず、「ナラティブ・アート」という言葉を、全く知りませんでしたので、行く前に調べてみました。物語を語る、伝えるアート、具体的にストーリーを描いた作品ということです。
1階正面には二つのシアターがあり、どちらもずっとドキュメンタリーを中心とした珍しい映像作品が上映されています。映画好きの私として、そこにずっと座っていても楽しいかもという感じです。その左手側が「ナラティブ・アートの歴史 英雄・神話・聖なるもの」と題したギャラリーで、ラスコーの洞窟壁画から始まり世界中のアートを凝縮しているのですが、現代のテクノロジーを使用した精巧な複製も多く、ここから見始めると、この美術館は有名作品の複製を展示しているのか?という疑問が湧き上がりました。そうでないことは、メインギャラリーである4階に行けば分かるのですが。CEOによると、実物を見るために世界中を旅することは難しいけれど、ここでは誰もがナラティブ・アートの根源的な神話をたどる旅に出られるようにした、とのことです。なるほどね。
メインギャラリーの4階は、作者、テーマによって30近いセクションに分かれており、その広さに最初は戸惑いますが、地図を手に歩いているうちに、殻付き落花生を引き伸ばしたようなスペースを把握できるようになってきます。これまで、絵画、彫刻、写真と比べて正当な評価を得られてこなかったイラスト、コミック、映画などを同等に扱うという、この美術館のコンプトを表すかのように、4階に着いてすぐ目に付くのは、ノーマン・ロックウェルの膨大とも言えるほどの作品群です。漫画のセクションは、もう日本にいるようで、仮面ライダー、ウルトラマン、鉄腕アトム、ピカチュウなどに会えます。コミックスのセクションでは、ピーナッツを始めとするコミックストリップに、多くの人が見入っていました。もちろん、「スター・ウォーズ」は必見です。写真を撮ろうと人だかりができるほどでした。ただし、フラッシュ撮影は禁止されていますので、写真を撮る場合は注意しましょう。作品の内容に偏りがある、という声もありますし、私も感じるところはありましたが、それは今後を期待したいと思います。
この美術館での一番の驚きは、5階のミューラルアートにありました。何と、あのバンクシーの作品が見られるのです。しかもかなりの数です。「風船と少女」「花束を投げる暴徒」など、誰でも一度は目にしたことのある作品が、この美術館にあるのです。事前に配布されていた資料にも載っていなかったので、大きな驚きでした。
残念なのは、作品に関する説明が表示されていないことです。特にガーデンにある彫刻は、作者名、作品名もありませんでした。表示があっても全部読むというわけではありませんが、興味を持った作品の背景などを知りたいと思う人は、少なくないはずですし、他の美術館ではやっていることです。これも今後を期待しましょう。
とりあえず、ロサンゼルスの新名所ルーカス・ミュージアムに、皆さんも行ってみませんか。
おがわ・ひろこ
神戸大学教育学部音楽科卒、同大学院修士課程修了。声楽、器楽、合唱、バレエなどのピアノ伴奏者、および合唱指導者。現在、南加日系合唱連盟会長。ミュージック・ペンクラブ・ジャパン会員。
