Global English からきたGlobishという造語が今流行っている。
造ったのは、フランス人のジャン=ポール・ネリエールというIBMの国際販売担当副社長だ。
世界各国を飛びまわっているうちに、現地のビジネスマン同士、商談には通訳など入れず、皆「怪しげな英語」でやりとりしているのに新鮮な驚きを感じたのだ。
ネリエールは、これをグローブッシュと名づけ、その形式を整える必要があると思い立つ。
国際ビジネスで頻繁に使われている英語の語彙1500語を選び出し、その1500語だけで、「Globish the World Over」(2009年)を著した。
「ブロークン・イングリッシュで何が出来る」と小馬鹿にするネイティブ・スピーカーに、ネリエールは「グロービッシュはなにも哲学や文学を語るための『従来の概念での言語』ではない。これは国際ビジネスで通用する『ツール(道具)』だ」と開き直った。
中世の東部地中海の諸港には、貿易商人たちが商談の際に使う「リンガフランカ」(Lingua franca)という共通語があった。ギリシャ語、フランス語、イタリア語、スペイン語、アラビア語などを混合して作り上げた国際共通語だった。20世紀に入り、それが英語にとってかわり、そして今グローブッシュが「21世紀のリンガフランカ」になろうとしている。
日本では楽天やユニクロが英語を2012年中に社内公用語化することを決定、日産自動車はすでに社内経営会議を英語で行っている。
こうした動きに、某大手自動車メーカー最高幹部は「日本人が集まるここ日本で、英語を使おうなんて馬鹿な話だ」と一蹴、論争が起こっている。
しかし考えてみれば、ブロークン・イングリッシュだろうが、ジャパングリッシュだろうが、要はこちらが言っていることを相手が理解し、相手が言うことが分かれば、商談は立派に成立する。グローブッシュは「言語」ではなく、「ツール」なのだから。【高濱 賛】