日本では記録的な猛暑が続き、9月も終わりになってようやく暑さが衰え10月の声を聞くとめっきりと秋らしくなった。猛暑の影響は人間だけでなく方々に見られるようだ。近くの公園では耳を聾するばかりのセミの声。その代わりあまりの暑さで水溜りの温度が上がり過ぎボウフラもわきにくかったのか蚊が少なかったそうだ。海では秋刀魚が獲れないで高級魚扱い、いたるところに異常気象が発生している。
 さすがに10月に入ってようやく過ごしやすくなりめっきりと秋めいてきた。コスモスの可憐な花が風に揺れ、真っ赤な彼岸花が目に沁みる。金木犀の甘い香りがどこからともなく風に乗ってくる。この東急田園都市線の沿線は、比較的遅い開発だったからか緑が多い。近所にはたくさんの神社や小公園が散在する。地元の人たちが土地を寄付し大切に護り伝えているのだろう。お正月には獅子舞が門付けをして回る姿が見られ、夏や秋には方々の神社ではお祭りが行われる。盛大に屋台が出て結構盛り上がるのでバカにできない。旧家が残っているせいか寄付をする人も多い。東京・渋谷まで25分の距離ながらまるで田舎の風情が楽しめる。
 以前はタケノコや野菜を栽培し東京へ出荷していたようだが、最近の農家はブドウやイチジク、キウイなど換金性に優れた作物を作っている。ベランダから見下ろせる裏のキウイ畑は見事。7本の木が針金で張られた棚に大きく枝を伸ばしている。7本の木で7000個に近い収穫だから秋のこの時期に鈴なりになった様は壮観である。
 ここのおじさんは研究熱心の働き者。加えて教育熱心でしょっちゅう近隣の小学校から生徒を呼んでパネルも作って実地教育に励んでいる。キウイの収穫時期には200人もの子供たちが手伝いにきて一日で収穫を終える。
 周りには次々と新しいマンションが建つが、まだまだ田舎の風情は楽しめる。都会と田舎が渾然一体となったこの地は誠に住み心地がよい。歩けば7分で天然温泉もあり、肌に快い秋風と共に季節の移ろいを楽しみ秋の味覚が味わえる。ぜいたくを言わなければここは天国である。【若尾龍彦】

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