小東京の桜も淡いピンク色の花を咲かせ、道行く人々に春の訪れを知らせている。
先日、透き通る青空の下、小東京を散策する機会に恵まれた。全米日系人博物館でツアーガイドを務めるボランティアスタッフの案内のもと、2時間ほど小東京を一周した。再開発が進み新しく変化を遂げる一方で、変わらずに昔のままのたたずまいも残る。
驚いたことに、普段何気なく歩いていた道に、今まで気づかなかった銅像や記念碑があったという発見があり、小東京の景色に深みが増す。
説明と共に案内役を務めてくれたガイドは、15年間小東京の歴史を伝え続けている。そして実際に日系人戦時転住所に収容されたうちの一人だった。
Union Center for the Arts(旧ユニオン教会)に差し掛かったとき、ツアー一行は足を止めた。ここは、戦後の日系人に所縁のある場所なのだという。第二次世界大戦が終わり、戦時転住所から戻ってきた日系人にとって、食事ができる場所は限られていた。
小東京は賑やかだった戦前の面影を消し、食料品を手に入れることすら困難だったという。そんな中、教会はお腹をすかせた人々に食事を提供し続けてくれた。
「Everybody lost everything」
彼女の口から発せられたこの言葉の重みに、当時の日系人の並々ならぬ苦労と悲しみが、昔の面影を残す教会を前によみがえる。
戦後65年がたち、今年からカレンダーに新たな祝日が加わった。日系人戦時転住所の不当性を訴え続けたフレッド・コレマツ氏をたたえ、加州政府は彼の誕生日である1月30日を「フレッド・コレマツの日」と制定した。
また小東京にも、写真家・東洋宮武氏の日系コミュニティーへの貢献をたたえ彼の名前が付けられた小道が誕生した。彼は戦時転住所に収容された時、隠し持っていたレンズでカメラを作り、真実を撮り続けた。
時代と共に移ろいゆくダウンタウンのネオンを背景に、小東京には今なお先人たちの功績が生き続け、またそれを守り残そうとする人々の姿がある。【吉田純子】