ビンラディン殺害で一躍脚光を浴びた米軍特殊部隊「SEAL TEAM SIX」(シール・チーム・シックス)。ナゾに包まれたこの部隊に所属し、激しい訓練を経て、テロリスト掃討作戦に参戦、百戦錬磨の二人の元隊員の回想録が今売れている。
一人は、まさにこの部隊に所属し、1993年のソマリア内戦に参戦したハワード・ワズデン氏。もう一人は、「チーム・シックス」ではないが、別のチームのシール隊員として訓練を受け、実戦部隊でアフガニスタンやイラクでテロリストと戦ったエリック・グレイテンズ氏。オックスフォード大学で政治学博士号を取得後、入隊したという変り種だ。
SEALとは、Sea(海)、Air(空)、Land (陸)の頭文字をとって命名された。「チーム・シックス」は、1980年、イランでのアメリカ大使館員人質救出作戦に失敗した教訓をもとに編成された精鋭部隊だ。
誰でもが隊員になれるわけではない。まず「地獄の一週間」と呼ばれている選抜テストを受けねばならない。1000人応募してパスするのは200人前後。体力だけでなく、決断力、精神面での強さが試される。
グレイテンズ氏の本は、「The Heart and the Fist」(「ハートと拳」)だ。博士論文は「人道主義運動と救済活動」。クロアチアの難民キャンプやルワンダの救済施設で働いた。マザー・テレサ修道院療養所の活動に感銘を受ける。弱者に目が注がれる。
〈不正な暴力によって虐げられている弱者をどうしたら救えるか〉
「戦争は卑劣だ。が、もっと卑劣なことは、戦うべき対象を知りつつ、己れの命が惜しいという理由で、不正義に目を瞑ることだ」
オックスフォードで学んだジョン・スチュアート・ミルの言葉を噛み締める。
「オックスフォード」と「シール」との接点だ。
「シールの凶暴性やマッチョ的な面ばかりが強調されているが、シールが特別なのは、武力を必要とする時に、いかに思慮深く、秩序正しく、冷静に行使できるか、それを極限まで極めようとしている点だ」
グレイテンズ氏はそう書いている。【高濱 賛】