劇場は築30年以上が経ち老朽化し、大規模の地震が起きると天井部が崩落する危険があった。ウィリス館長は、補修を済ませ安全を確保したことを強調し「7月に仮オープンし、8月か9月頃に正式に再開させたい。こけら落としとして、記念イベントを開いて再開を祝いたい」と話した。
同劇場は、能、歌舞伎、文楽など伝統芸能の観劇ができる全米に比類ない設備を誇る。舞台には、幕はカーテンではなく緞帳、両側に花道を設け、能、歌舞伎用の所作台を備える。歌舞伎役者、中村勘三郎はニューヨーク公演の際に、同館から送られた所作台の上で演じたという。
古典芸能や文化に限らず、従来通りJポップや映画など、地元のみならず日本、全米からのアーティストに発表の場を提供し「敷居の高くない劇場」を目指すという。だが、説明会の参加者から使用料がトーレンスなどのそれに比べ、割高で借りづらいと指摘を受けた。さらに、長い行列のできる女子便所の不便性やスタッフのサービスなど、さまざまな改善を求められた。
二世週祭の紅白カラオケ歌合戦を主催する菊地日出男さんは、第1回から一昨年までの24年間ずっと、同劇場で開いてきた。昨年、やむを得ず会場をLA郊外に移したが使用料は約2000ドル安い上、スタッフのサービスもずっとよかったという。日米劇場を愛し今年2年ぶりの開催を検討する菊地さんだが、この日の説明会に日本舞踊の師匠など文化の担い手と、カラオケの歌手が呼ばれていないことに首を傾げた。「日本文化を育てるなら、使う人の気持ちになって安くしてもらわないと困る。みんな日米劇場を使いたいのに」と嘆いていた。
日系社会からの要望と寄付により、コミュニティーのために建設された日米劇場。なのに昨年の突然の休館時には、文化会館側からは明確な説明がなく、会員や寄付者、利用者などの多くが不信を抱いた。ウィリス館長は「これからは、みんなの声を聞いて運営に役立てたい。今日は、コミュニティーの貴重な意見をたくさん聞けて意義のある説明会だった」と述べた。【永田潤、写真も】