ジェニファーさんは、オレンジ郡ラハブラ在住の河合純、栄子さん夫妻の長女として生まれた。小さい頃は引っ込み思案で、小学校の先生から「笑ってごらん」と言われても、なかなか笑うことができなかったシャイな女の子だったという。母栄子さんが「友達ができるように」とダンスを勧め、9歳の時に地元のダンススタジオでキャリアをスタートさせた。
努力家らしく、ジャズを中心にバレエ、ヒップホップ、タップなど異種のダンスに挑んだ。踊り方や表現方法が異なる各種ダンスの長所を吸収、器械体操にも取り組み身体能力を高め、ダンスのスキルアップに役立てた。
ダンススタジオの先輩ダンサーの中には、レーカーガールやクリッパーガールなどもいて、一緒に練習し刺激を受け「いつか私も…」と夢を膨らませた。プロダンサーを志したこの頃は、中学の時だった。高校3年間は、チアリーダーとして活躍した。
カリフォルニア州立大ロングビーチ校でジャーナリズムを専攻し、ダンスのクラスも取った。卒業後は、現在まで母校のウィティア・クリスチャン高校でチアリーディングを教える。馬を愛し乗馬を趣味に持ち、ハンティントンビーチの乗馬センターでイベントコーディネーターとして働くかたわら、ダンサーとしてのキャリアを積み上げた。昨年までの2年間「MLS(メジャーリーグ・サーカー)」所属でカーソンに本拠地を置く「チーバスUSA」で踊った。そして3度目の挑戦でついに、レーカーガールの一員となり、子どもの頃からの夢を叶えた。ダンス一本に絞るため、5年間勤めた乗馬センターを最近退職したという。
家庭では日本語で会話したことから、日本語を流ちょうに話す。ノーウォークの協同システム日本語学園に通ったため「ヒラガナとカタカナの読み書きができて、漢字もちょこっと」。小東京には両親に連れられ、センテナリー合同教会で日曜学校をとったのも、日系社会でのいい思い出の1つだという。
競争率30倍の狭き門パス
「コービーと同じコートで」
プロのダンスチームに入るには、もちろんオーディションを受け、他の多数の応募者とともに競ってパスしなければならない。中でも、とりわけ難関として知られているのがレーカーズである。ジェニファーさんが受けた今季は約600人が参加し、合格者はわずか22人。競争率約30倍という狭き門だった。パスできた理由を「ダンスの基礎と技量が認められた上に、私のダンススタイルがクラシックスタイルを重んじるレーカーズに合っていたと思う」と見る。また、チーバスガールとしてプロスポーツチームでの経験に加え、「頑張り屋」の性格も高く評価されたという。
レーカーズは、マジック・ジョンソン、シャキール・オニール、コービー・ブライアントなどスーパースターが在籍した名門チーム。厳しい審査を勝ち抜いたジェニファーさんは「驚いて、信じられなかった。大きなゴールにしていたが、まさかNBA最大のチームの1つのレーカーズで踊れるとは思わなかった」「(試合開始前の)国歌斉唱の時に、横にはテレビで見るコービーなど大物選手がいる。その同じコートで踊れるのは感動的」
高度なテクニックを身に着けた選ばれたものだけが、演じることができる華やかな世界。美しさも兼ね備えた精鋭チームは、一糸乱れぬパフォーマンスを見せ観客を魅了するアーティストでもある。ジェニファーさんが「レーカーガールは、単なるチアリーダーではない」と言い切るのが、うなずける。
振り付け師の指導の下、毎シーズン新しいダンスに取り組み、1試合に5、6種類、シーズンを通して13種類のオリジナルダンスを踊る。演技毎に決められたコスチュームに身を包み、演技で心掛けるのは「与えられたその日のルーティーンをきれいにまとめること」とプロ意識を高め、チームワークに徹する。
ダンサーに変わりはないが、演技中はジャンプやスピンなど素早い動作が連続し、アスリート並みの激しい運動をこなす。週2回のチームの全体練習の他、ジムに行って自転車をこいだり、走ったりするなどしトレーニングを積む。「体重増に気を配り、野菜とタンパク質を多くとる健康的な食事で体調を整えている」と話すように、アスリートと同様の生活を送る。
レーカーズのダンサーとしての契約は、1年限りと厳しい。4年、5年などとチームに在籍する実績があるダンサーでさえも優遇されることはなく毎年、オーディションを受ける必要がある。7月のオーディションについては「また受ける。怖いが、パスしなければならない」と早くも来季をにらむ。
ダンス歴は20年になる。チームメートは20代前半がほとんどだが、ジェニファーさんはルーキーで、少しばかり遅咲き。ダンサーとしてのキャリアは今が絶頂期であることを知っており、引退後は「プロフェッショナルレベルで後進の指導に当たりたい。次の段階も素晴らしいチャンスが待っていて、頑張ることを続ければ、いい経験ができると思う」と前向きである。また「家庭を大切にしたい」と話し、子どもを持ち母親になることを願っている。「男の子を産んで野球選手にして、野球好きなお父さん(純さん)を喜ばせたい」と親孝行も忘れてはいない。