日本語は外国人にとって、外人向けの男女別のない標準語で入る入門レベルでは割とやさしい言葉と思う。母音もあいうえお5音しかなく、子音の種類も中、仏、英語などに比べ種類も少なく単純。ただ日本語は漢字が入りさらに中級以降に行くと急速に難しくなる。奥の深さと変幻さは世界でも有数の難度の言語だ。
 だが、例えば中国語を習う日本人は日本語より難しいと印象を受ける人が多い。中国語の漢字数は常用では日本の約3倍で、一字一字に上り下りの音声が決まっているので難しく感じる日本人が多い。が私は比較して日本語のほうが難しいと思う。
 日本語は単純でなく、漢字は訓と音の最低でも2つの読みがあり、上の字で言えばうえ、あがる、あげる、のぼる、かみ、じょう、しょうなど読み方の多い字が無数にあり、前後関係から正しい読みを瞬時に選び読み分けねばならない。
 実は日本人はその難事を日常的に容易にやっている。「今日1月1日は祝日でちょうど日曜日、日本では三日間が休みの日だ」この文は日本人なら簡単に読む。
 ここに「日」の字が8回出てくるが、全部読みが違う。よう、たち、じつ、にち、び、に、か、ひ。日本人はこれを一瞬に読み分ける魔法のごとき技を当り前にやっている。外国人として日本語を学ぶ立場ではこれは嫌になる難しさだ。
 中国語は漢字の数は多いが一つの漢字は一つの読み一つの音声しかなく簡単明瞭。物の単位の例で「本」、中国語ではいつも同じ読み方。日本語だと、いっぽん、にほん、さんぼん、と変化する。他の単位の匹、羽、発などみな同じで変幻極まりない。
 欧米語も一つの単語はcupはcupで訛りは別として原則的には一つの読み方しかない。自分のことも英語はI、中国語は我、仏語でJeというだけ。日本語ではわたし、わたくし、あたし、わし、僕、俺、小生など標準語だけでも多数使い分ける。方言を入れたら無限に近い。さらに男言葉、女言葉、敬語、謙遜語、漢字、平がな、カタカナと、紙面の都合で話を広げる余裕がないが、日本語は中級、上級になると変幻奥深さで日本人にすら難しい言葉、文化だと思える。【半田俊夫】

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