今年のテーマ「ボーダレス」と聞くと真っ先に、国境を超えて広まる日本食を思い浮かべることだろう。だが、同社は日本食が国籍・人種、年齢、性別、収入など、階層を超えて浸透していると分析する。さらに、フレンチ、イタリアン、メキシカンなど外国料理と融合することも境をなくしていると捉えている。この大衆化の流れを促進するためにエキスポでは新たな企画が目立った。
同イベントは昨年までは、ロサンゼルス本社の駐車場と倉庫を利用して開いていたが、大衆化で加速する普及に対応するために会場をパサデナに移し、規模拡大を図った。来場者数は昨年比で300人増え、新企画や質を上げたセミナーなどで内容を充実。各メーカーが一堂に会して、共通のテーマの下に顧客との商談に専念できる環境を整えた。
やまじるし味噌でお馴染みのミヤコ・オリエンタルフーズ社は、自然食品にこだわる。この日は、今はやりの塩麹の説明を求めた客の対応に追われた。副社長の清水照雄さんによると、塩麹は酵素を利用して食べ物の中にあるタンパク質を分解しアミノ酸に変え、でんぷん質を分解して甘みを出して、うま味を引き出す。清水さんは「酵素を使った自然の万能調味料」と表現。家庭でも肉や魚、野菜に和えて簡単に調理でき幅広く使えるとし「チキンやビーフ、ポークにも合い、まろやかな味になるので、他の国の料理に使われると思うのでおもしろい」と期待を寄せる。高血圧症などの人は塩分量が気になるが、みそ汁やチキンスープのそれと同じくらいで、調理法は食材の重量の1割弱が目安だという。
ブースでは、塩麹をレストランのシェフなどが試食し「おいしいと言ってもらい、評判がよかった」と手応えを掴んだ様子。レストランの商品としては「豆腐など安い食材に塩麹を使い、ひと手間かけることでおいしくなり、いい値段で売れるので利益が出せる」とアドバイス。また、オイルと混ぜたドレッシングやオリーブオイルと組み合わせたカルパッチョでは隠し味としての利用を提案した。
会場では、各種セミナーが開かれた。地酒・焼酎、地ビール、マグロの降ろし方、包丁の研ぎ方、食物アレルギー、パネルディスカッション(多店舗展開する日本食店のオーナー4人)などが行われ、各講師は「客の気持ちになって」などと、成功の秘訣を伝えた。
日本ではラーメンは、寒い北部ではこってり、南部では豚骨などのあっさりなどと、地方で種類が異なる。麺はスープの濃度で太さが決まるといい、こってりは太麺、あっさりには細麺が合う。食感を出すためには、ゆで方が重要だと強調し、コツはたっぷりのお湯の中で、太さに合わせて温度、時間を管理し、2玉、3玉を1度に調理せずに、1玉ずつゆでる。中村さんは「すすりやすさも考えて、スープに泳がせるようにほぐしてサーブすればいい」とアドバイス。「一過性のラーメンブームにさせずに、正しい作り方で、おいしいラーメンを食べさせてほしい」と呼び掛けた。
参加者のマックス・アッカーマンさんは、サンディエゴの和食店「ハーニー・スシ」でシェフを務める。客は、地元の常連、軍人、旅行者などで、人種、年齢、好みもさまざま。それぞれのニーズに多種のメニュー―すし、刺身をメインにチキンテリヤキ、ラーメン、枝豆、焼き飯、カツ丼などで応えているという大衆店だ。同エキスポの参加について「客は日本食の良さを知れば知るほど、別の日本料理を食べるようになるので、勉強のために来た。セミナーでは麺の種類の違いと、ゆで方の大切さが分かってよかった」と述べた。将来は和食店を持つことを夢見ており、先月には東京、大阪、京都を食べ歩いた。「和食は奥深いので、もっと修業して極めてから独立したい」と話した。
山本社長は、日本食の大衆化はいっそう進むとし「将来はアメリカ人の食文化のメインストリームに育つだろう」と展望する。「大衆化で日本食の浸透を肌で感じている。底辺が広がっている」と、強調する。「日本の味を世界の人々に」をモットーとする共同貿易は、単なる問屋ではない。山本社長はその役割について「メーカーとレストランの間に立って、共存共栄を図るために、ともに日本食を極めながら市場を拡大させたい」と話し、新しいトレンドに合わせた商品の共同開発やレシピの考案などを行っている。「日本食は健康であり、見て美しい、食べておいしいの三拍子揃っている。他の外国料理には、そうはない。ビジネスチャンスは無限にある」と力を込めた。