ロサンゼルス市議会の特別委員会は16日、かねてからアントニオ・ビヤライゴーサLA市長が支持していた不法移民への写真付き身分証明書の発行案を3対0の全会一致で承認した。
 写真付き身分証明書は、同市で配布されている図書館利用カードに銀行のデビットカード同様の機能が付き、銀行で預貯金などの各種サービスが受けられるようになるというもの。
 学生証明書のようなデザインで顔写真のほか、住所、誕生日、髪と目の色、身長、体重が明記され、市議会本会議で承認されれば、不法移民でも法的に身分を証明できるカードとなる。
 不法移民のほか、高齢者、ホームレスなどすべての市民が入手することができるが、運転免許証の代わりとして利用することはできない。
 加州ではサンフランシスコ市やオークランド市を含むいくつかの自治体で、すでに在留資格の有無に関わらず、同市に居住していることを証明できれば誰でも写真付き身分証明書を所持することができる。
 LA市にはおよそ430万人の外国からの移民が居住しているといわれている。このうちの不法移民の人は、現在までのところ自己名義の銀行口座を開設できないため、まとまった現金を自宅に置いたり、持ち歩くことが多いため犯罪に巻き込まれるケースも多いという。
 ビヤライゴーサ市長は、「彼らに身分証明書を与え、銀行に貯金を預けることができるようになれば、不法移民を標的とした犯罪も減少するだろう」と力を込める。
同案に関してはかねてから賛否両論があった。
 反対派からは「不法に滞在している人々を支援する仕組みは法の精神に反する」との声があるほか、「法律を犯して滞在しているにも関わらず、一般の市民と同じような暮らしが送れるように自治体が促すことは、道理に反している」との不満の声も聞かれた。
 不法移民に対する反対運動を行う全米移民改革連盟の代表者は、「ロサンゼルスは連邦の移民法に違反している不法移民にとって、さらに住み心地の良い街になろうとしている」と痛烈に批判した。
 一方、賛成派は「不法移民の弱い立場を利用して、高い手数料を要求する街中の金融機関から彼らを守ることができ、犯罪を減らすことができる」と主張。
 コリアンタウンの移民労働者連合の代表者は、「銀行口座を開設し、ヘルスサービスを受ける際に、在留資格の有無が関係あるのだろうか」と訴え、同提案を支持している。 
 同提案は3週間以内にLA市議会本会議で採決され、承認される見込みとなっている。

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