出るの、出ないので揉めた日本。不公平な分配金に不服を訴え、来年3月開催のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)は、2連覇した王者不在の大会となり得る可能性があった。
 紆余曲折を経てようやく出場まで漕ぎ着けたが、監督選びは当初、現役から人選するなどし手こずった。その後も問題が続く。大リーガーすべてが、不参加を表明。イチローを筆頭に黒田、ダルビッシュ、岩隈、青木など「日本を代表する」選手が、日本代表にならなかったのが惜しいし、おかしい。
 過去2大会で日本を引っ張ったイチローは、年齢的に今大会が代表としての見納めだったことだろう。残念なのは、ファンはもとより、カリスマ性のあるイチローに憧れる他の多くの若い選手だったに違いない。「イチローさんと一緒に」という願いはついえた。次は「日の丸を背負う」という重責をモチベーションに、母国に3連覇をもたらしてもらいたい。
 世界的に競技人口が少ない野球は、五輪競技から除外されるなど、国際的な問題が起こるたびに、サッカーとの差を痛感する。サッカーは、ワールドカップを頂点にクラブチーム世界一を決めるトヨタカップがある。自国のリーグ優勝のそのまた上の世界一を目指すのだ。だが野球は、盛り上がりに欠けるアジアシリーズが頂点で、アジアシリーズとワールドシリーズの覇者同士の決戦はなく、その実現は大リーグ機構のリーダーシップの発揮が必要である。
 一流の選手が出場しないWBCが、世界一を決める大会とは言いがたい。サッカーW杯が、各国のリーグから独立した中立のFIFAという世界最大の競技団体が主催するのに対し、WBCは大リーグ機構が主導する。ここに大きな問題がある。シーズン以外で、高額年俸の選手に怪我をされてはと、大リーグの各チームが出し渋るのも当然だ。
 WBC出場の辞退は本人の意志なのでしょうがないが、シーズン終了後の大会開催など、出場しやすい環境を整備する努力が大リーグ機構には見られない。日本への配当が少ない点もしかり、問題を解決する意思が大リーグ機構にない限り出場辞退はいつまでも続く。【永田 潤】

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