12月4日公示、16日投開票の衆院選挙に向けて日本が騒がしい。野党に下野した鬱憤(うっぷん)を晴らすがごとく政権奪還に鼻息荒い自民党を筆頭に、「第三極」暴走老人こと石原氏とタッグを組んだ橋下大阪市長率いる日本維新の会。「卒原発」を掲げる嘉田知事を担ぎ、なんとか一角に滑り込もうとする小沢氏が合流した日本未来の党。その他、みんなの党など、15もの党が乱立する。
 今回の選挙の焦点として、脱原発、TPP、震災復興、景気対策、財政再建、領土問題、少子化対策などが挙げられる。そして、2009年に政権交代を果たし、これらの課題に対応してきた民主党の約3年間の政権運営に国民が審判を下す。
 大騒ぎしている政治関係者を除き、一般市民はどう考えているのだろうか。増税やTPP参加交渉などさまざまな問題に対して、個別の世論調査などではイエス・ノーの回答が出ているものの、これからどういう日本にしたいのかという市民が望む国全体のビジョンが見えてこない。高額の税金を払っても福祉が充実している福祉国家なのか、再び経済大国を目指すのか。日本からの旅行者の話を聞くと、物価は安いし、安全だし、贅沢を言わなければそこそこ楽しいという。しかし、10年後、20年後先の話になると一様に不安を訴える。
 毎年のように首相が交代する日本の政治劇に海外のメディアは冷ややかだ。一方で石原氏を筆頭に日本が極右化し、軍事国家に逆もどりするのを懸念する声もある。さまざまな国の人たちと歴史の話をすると、なぜ小国の日本が当時のソ連や中国、アメリカなどに戦争を仕掛けたか驚きの声が多い。日本人特有の盲目的な集団性が暴走する可能性を今でも忘れていない向きが多い。
 政治家の首だけすげ替えても、実際の運営の中心は役人だ。そういって諦めて何もしなければ何も変わらない。米大統領選挙では選挙権がないため何もできなかったが、今度は違う。せめて、日本に住む大切な人々のために一票を投じたい。【下井庸子】

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