景気はまさに「気」だなあと思う。3年ぶりに政権が交代し、安倍政権のスタートと共に日米同盟を基盤とした「強い日本」、3本の矢を推進力とするデフレ脱却の景気対策で、行き過ぎた円高が是正され株価が上がって人々の気持ちも前向きに動き始めた。円安への動きは多くの人々に「円高の今のうちに」と海外旅行熱をあおり、この冬の海外旅行者数は相当な数にのぼったようだ。物価にインフレの兆しが見え、やがて日程に上ってくる消費税引き上げも住宅や自動車など大型商品の駆け込み消費の動きを加速させるだろう。
戦国期、信長や秀吉は楽市楽座で商人を呼び込み、道路や橋を整備して経済力を高め、強力な軍団を作って天下を統一した。国の力は強い経済力である。日本の国土は米国の25分の1と小さく、しかも8割は山で、残りの2割の平地に人口が密集している。天然資源は乏しく、あるのは勤勉で教育された人材である。日本の人々は、昔から切磋琢磨して勤勉に働き、この国を支えてきた。それが世界の奇跡といわれた明治期の近代化、戦後の復興を成し遂げた。
明治の開国以来、この国の経済発展を支えてきたのは貿易だ。その貿易収支が昨年度は過去最大となる6兆9273億円の赤字になった。打ち続いた円高で国内生産は海外に移転し、当然の帰結として技術流出が続き国際競争力は弱まっている。他国が国を上げての企業支援・技術振興に走っている間、日本政府の動きは緩慢だったといわざるを得ない。しかし政府の腰が据わり、有権者の顔色をうかがう政治から本当の国益を目指す長期戦略を策定し実行するなら必ずや貿易や経済は復活するに違いない。
さて、動き始めたアベノミクス、日本に強い経済力は戻ってくるだろうか? 輸出は再び活性化し、国内産業が復活し、雇用は増えるだろうか? 政府は長期戦略を策定してぜひとも強い日本を実現し、若者が未来に希望を持てる国にしてもらいたい。国民の気持ちが上向きに変わった今こそ、政府の強力なリーダーシップと国民の奮起を願う。【若尾龍彦】