シカゴの夏祭り「銀座ホリデー」の中日のフィナーレはジャズにアレンジされたヨーコ・ノゲさんの炭坑節が会場に流れると最高潮。
会場の後部から5〜6人の若い女性が揃いのゆかたで踊りながら現れ、観客を引き入れながら通路を練ってゆく。踊りの列はだんだん長くなり、見よう見まねの観客が老若男女に子供も加わりサノヨイヨイ! と続く。
この若い女性たちは絆プロジェクトでシカゴを訪問中の日本の大学生たちで、地元の太鼓グループからゆかたを借りて、本番の1時間前にミュージシャンで仕掛け人のヨーコさんから即席で習った炭坑節で催しを盛り上げた。
問題はその後だった。控え室に戻った若者たちは、ゆかたを着替えることも忘れて延々とおしゃべり。会場の仏教会関係者は早く片付けたいし、ゆかたを貸した担当者も早く返してもらって帰宅したいのだが、辛抱強く待っている。
女子大生らはしばらくしてやっと気が付いたらしくゆかたを着替えたが、誰一人「ありがとうございました」の一言もなく帰って行った。
関係者の帰りの車のなかでの話題は当然、「この頃の日本の若者は…礼儀がない」になった。
2日後、この「絆プロジェクトの女子学生」たちは太鼓グループのディレクターの招待でコミュニティー・センターを訪れて太鼓の初級ワークショップに参加した。
ああ、またあの行儀の悪い若者の面倒を見るのかと、少々気が重かったのだが、女子学生たちはセンターのドアをあけるなり「先日はお世話になりありがとうございました」と、これが同じ若者たちかと思うほどの変身ぶり。
まずびっくりさせられたが、日系社会福祉センターの歴史と日系人の歴史の概要を話すと、熱心に耳を傾けてくれた。
その後の太鼓のワークショップにも一生懸命取り組み、「日本でも出来ない体験でした。日系人のたどった歴史も、私たちの知らないことばかりでした」と謙虚な態度。予定の時間を大幅に超過しての訪問だったが、人間は第一印象だけではなかなか判断できないものだ。
彼女たちの行儀悪い印象を修正する機会に恵まれてホッとしている。【川口加代子】