日本で今爆発的な人気を博しているテレビドラマ「半沢直樹」のビデオを見た。原作者は直木賞受賞作家の池井戸潤。元銀行員。その体験を基に大手都市銀行を舞台にした「企業エンターテインメント小説」を書いている。その小説のドラマ化で、ディレクターは福沢諭吉の玄孫、福沢克雄。
 堺雅人演じる主人公、半沢直樹がめちゃくちゃ面白い。半沢はバブル末期に銀行に就職した「バブル入行組」。第1話では、支店長の鶴の一声で無担保で5億円の融資をした会社が粉飾決算発覚で、倒産。融資課長だった半沢は責任を負わされて左遷寸前。本来なら土下座して謝るところを半沢は自分に責任をなすりつける上司たちに「やられたら、やり返す。倍返しだ!」とたんかを切って行動を起こす。
 むろん素手で悪い奴らを追い詰めるわけではない。探偵まがいの独自調査で隠し財産目録や通帳、極秘メモを入手。意図的に破産宣告した会社社長の海外資産の帳簿を、その愛人を使って手に入れるといった離れ業も。悪行がばれた支店長が海外にある子会社に「島流し」されるのを尻目に、銀行の中枢部署に栄転する半沢。第1話のエンディングは小気味いい。
 企業内の陰湿な人間関係や事なかれ主義にもめげずに必死に生きているサラリーマン諸兄にとっては、格好の鬱憤(うっぷん)晴らしになるはずだ。だから29パーセントという高視聴率を保っているのだろう。
 こんなサラリーマンがアメリカにもいるはずだ。某大企業を定年退職したばかりのAさんに水を向けると、「アメリカは『Hanzawa』ばかりだよ。責任転嫁をしようとする上司がいたら株主に直訴。不当な行為をした上司はPower Harassment in Workplace(パワハラ)の対象だ」と言い放った。
 その前提として米企業にはMandate(職務執行権限)がある。職務執行度に見合った報酬が支払われる。一定期間のうちに成果が上がらなければ権限は剥奪される。つまり首だ。左遷とか子会社への出向などといった話ではない。
 日本で大受けの企業ドラマ「半沢直樹」。奇しくも日米の企業社会の違いを思い知らせてくれる。【高濱 賛】

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