マイアミ州のある若い女性がこのほど、食料品店で万引きを働いた。その額およそ300ドル相当。カートに積めきれるだけたくさんの食料を積んで店を出たところ彼女は捕まった。警察官が犯行の動機を問いただすと女性はこう答えた。「子どもたちが家でお腹を空かせているから」
 万引きを働いた女性は娘1人、息子2人を抱えるシングルマザーで、生活に困窮し、食料品を買うお金すらなかった。事情を知った警察官は過去に女性に犯罪歴がなかったことを確認すると、拘束することはせず、軽犯罪として処理して出廷通知だけを発行した。そのほか、自宅に何も食べ物がないという女性に対し、生活に困っている人のために無料で食事を提供している教会や、食料品を配給するフードバンクなどの情報を教えた。
 ここまでなら「警察官の心温まるエピソード」として話は終わる。だが、今回はまだちょっと続きがある。
 この警察官、そのあと再び食料品店に戻り、自腹で100ドル分の食料を買い、その母親とお腹を空かせた子供たちに渡しているのだ。
 「食料品を買ってあげようと決断したのは、彼女を逮捕してもお腹を空かせた子供たちがいる現状を解決することはできないから」。女性はボーイフレンドが失業した後、以前まで受け取っていた連邦政府からの補助が受けられなくなり、生活苦に陥っていたようだ。
 さらに今回のような行動はこの警察官にとって初めてではなく、以前にも同様のことをしており、同僚も同じようなことをしてきているという。
 一連の出来事で、警察官が母親に課したのは「自分の力で生活できるようになったら、困っている人を助けてあげる」ということ。もちろん彼女は約束を果たすと誓った。食料品の入った袋を夢中でかき回す子供たちの姿は、まるでクリスマスの贈り物を前にはしゃいでいるかのようだったという。「100ドルの価値は十分にあった」。警察官はそう振り返っている。 【吉田純子】

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