先日金曜日の夕方の出来事である。コンピューターの前で作業中、思いっ切りくしゃみをしたら、前歯の差し歯がポロっと抜けた。数カ月前にインプラントをした歯だ。2日後の日曜日に仕事で人と会う予定である。以前も同じことが起こり、歯専用のセメントを買ったのを思い出し、洗面所の収納棚から探し出したが、もうコチコチに固まっていて使い物にならない。
 歯医者に電話すると、閉院間近なので、月曜日にアポを取るように言われた。「今からすぐ伺うので…」、車で5分、渋滞でも10分で着ける距離だ。しかし、躊躇した。実は、足のけがで自分で車を運転できない状態だ。さあ困った。今から誰かに連絡し迎えに来てもらうのにももう時間がない。そもそもこの時間にすぐさまかけつけてくれる人は誰もいない。
 「あっ、そうだ! あれがある!」と思い出したのは、Uber(ウーバー)だ。以前から便利だと噂を聞き、存在は知っていたが、2週間前に友達から教えてもらい、UCLAの病院帰りに初めて使ったばかりだった。
 スマホのアプリを使ったタクシー配車サービスである。2009年にサンフランシスコで始まり今では世界中53カ国、200都市に展開中だ。迎え場所と行き先をインプットして待つだけ。
 クレジットカードを登録し、決済処理が簡単。降車時、ドライバーとのやりとり無しでチップもいらない。推定運賃も事前に表示される。スマホで詳細の地図が表示され、運転手の顔写真、車種、現在地、あと何分で到着かが一目で分かる。早速リクエストし、松葉杖で2階から階段をゆっくり降りると、既に到着し待っている。3分も経っていない。
 幸い歯医者に間に合い、無事に治療してもらい、再びUberを使って帰宅した。ラッシュアワーだったので、往復数ドル割り増しだったが合計10ドル程。その歯医者があるオフィスビルの駐車代はバリデーションをしてくれなく、14ドル掛かる時もある。Uberで移動の方が安上がりだ。
 これまで4回程近距離で乗ったが、ドライバーは皆フレンドリー。とにかくこんな便利なサービスが可能になった。テクノロジーの知恵だ。民主主義社会における自由競争で消費者が喜ぶのなら大歓迎である。【長土居政史】

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