安倍晋三首相が来月末、来米する。首相の公式訪問は、数年間で幾度かあるため、訪米に限って言えば驚くことはない。だが、今回は中味が大きく異なり、オバマ大統領との会談後、4都市を回り、その中にロサンゼルスの日系社会を訪れることに注目したい。
 日本からの政府要人は、中南米歴訪の際にロサンゼルスを経由することが多いと聞く。だが、スケジュール的にきついのだろう。立ち寄って視察することは、まれである。これまで、各国の元首がLAを訪問しているのをうらやましく思ってきたので、待望の首相訪問を大歓迎したい。
 LAには7年前に皇太子さまが来られ、3年前には岸田文雄外相が外相としては実に19年ぶりに訪れ、小東京の日系関連施設を回った。ともに全米日系人博物館を見学し日系史を学んだ後、日系諸団体の代表と会談し、出席者一人ひとりに話しかけた上に意見にも耳を傾け、うれしく思った。謁見した代表は、労いの言葉をかけられて激励を受けた。いっそうやる気が沸いたのは、言うまでもなく、皆感激の表情を浮かべていたのが印象的だった。
 LAを訪れる国賓には、このような日米関係に寄与する人々に会って励ましてもらいたい。ユネスコの無形文化遺産入りした和食そして、各種日本文化などは、まだまだ普及させなければならない。その担い手となるアメリカ人と日系人の活躍を見てもらいたい。例えば、すしを握る職人とお客、日本語を教える先生と学ぶ生徒、着物を着てお茶を点てる若者、コスプレ姿のアニメファンなどなど、親日家は、たくさんいる。
 首相は今回、ワシントンで日本の首相として初めて上下両院合同会議で演説する大役を務める。揺るぎない日米同盟を世界に見せつける最大のチャンスであるとともに、戦後70年の節目の年に、日本の平和国家としての歩みを叫んでもらいたい。
 LAで首相は、第2次大戦中の収容所生活体験者などと会う予定という。ゴールデンウィークの真っ最中の貴重な休暇を返上して、足を運んでもらい敬意を表したい。【永田 潤】

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