東京都渋谷区が同性カップルを「結婚に相当する関係」と認め、証明書を発行する条例案を議会に提出すると発表した。日本の憲法では、「婚姻は両性の合意のみに基づいて成立」と規定しているため、法律上の効力はない。しかし、同性カップルにも異性カップルと同じ権利を認めるよう求めたこの動きは、性的マイノリティーに対する取り組みに遅れをとっている日本にとって大きな一歩だ。
 私が日本に住んでいた16年前、テレビや舞台といったエンターテインメント業界で数人が活躍する以外、日常生活の中で同性愛者について耳にすることは皆無だった。しかし、渡米してその環境が180度変わった。大学教授やクラスメートをはじめ、友人や主治医などにLGBT(レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダー)がおり、日本在住時に感じていた「特別な存在」ではなくなった。
 また同性婚についての取材を通じ、同性愛者の声をじっくりと聞く機会があった。その中で、自ら選んで同性愛者になったわけではないこと、また同性カップルというだけで、人生を共にしてきたパートナーとの間で認められるべき権利や社会保障給付が受けられないことなどを学んだ。さらにトランスジェンダーの男性とその母親の取材では、心と体の相違に長年苦しんだことや、カミングアウト後の家族の心情の移り変わりを聞き、心が痛んだのを覚えている。
 アメリカのオンラインサイト「ハフィントンポスト」によると、1590年に創建された京都の春光寺では、信条や性的指向にかかわらず結婚式を執り行っており、2010年以降5組の同性カップルが同寺院で式を挙げたという。副住職は同サイトの取材に対し、「今までは海外でのことと思われていた性的マイノリティーの問題を、日本でも人権問題としてとらえる機会を提供したい」とコメントしている。
 日本の法律が変わるまでには長い時間と理解が必要になってくるだろうが、誰もが本来の自分を隠さず生きられる世の中になってほしい。【中村良子】

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