ちょうど1年前のチャリティー自転車ライドで、山道を駆けるバイカーのスピードに合わせてすぐ横を飛ぶ撮影用のラジコンヘリコプターを初めて目にした。同時に送られてくる画像を確認しながら巧みに操る人に聞くと、同機は従来機と比べ、プロペラが6枚ついているので飛行が安定してブレにくく、きれいに写すことができるという。帰宅してから映像を見て、その美しさに納得した。
 これまでもカーレーサーやスキーヤー、サーファーなどが、小型カメラをヘルメットなどに装着し、臨場感あふれる世界を映し出していた。今は、さらに空を飛び、撮影の領域を広げている。この小型無人飛行機は、ハチが飛ぶ擬音から「ドローン」と呼ばれ、世界で急速に普及し、興味をそそる。
 ドローンの活躍の場は、実に幅広い。地震や山火事、洪水、事故現場などを空撮して、被災状況を把握し、迅速な人命救助や復旧に役立てたり、映画の撮影、ラグビー日本代表は選手の動きのチェックに、そして空飛ぶ宅急便は実用化へ向け研究が進められているという。全地球測位システム(GPS)を活用し正確性・安全性を向上させ、目的地まで到達する機種まで登場した。専用コントローラが不要のスマートフォンなどで手軽に操縦できる機種の開発は、もうそこまで来ているらしい。現在は信頼性のある機種で100ドルを切ったものもあり、普及がさらに進み、低価格が待ち遠しく思う。
 用途は商業目的が多いが、いいことばかりではないのが世の常。物は使いようで、犯罪の道具としての悪用が懸念される。数日前に首相官邸の屋上に落下、ホワイトハウスにも1月に墜落し、社会問題化した。テロ実行のための使用も考えられるため法規制が急がれる。無人の偵察機や爆撃機のように、ドローンもすでに戦闘地域の空に飛ばされているという。
 室内で遊べるおもちゃとして10年ほど前に市販され始めたラジコンヘリの印象が、まだ私の頭の中に強く残っている。テクノロジーの進歩により使い道が広がる期待は大きいが、クリスマスプレゼントとして子供たちが大はしゃぎするおもちゃのよくない転用は大きな不安だ。【永田 潤】

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