同プログラムは事件や災害などで精神的苦痛や心的外傷を受けた人をケアする目的でLA市が実施。プログラムに応募したボランティアは2カ月間のトレーニングを受ける。
トレーニング中はロサンゼルス市警察(LAPD)やロサンゼルス市消防局(LAFD)、LA郡検死局、精神科医など各分野の専門家を講師として招き、非常時の対応を学ぶ。また実際に事故や災害現場に直行し、被害者や犠牲者家族と接し、心のケアを行う。
毎年ギャング関連の犯罪などが多発するLAでは、こうしたプログラムが重要性を増している。
ボランティアメンバーには1日に平均して1回、LAPDとLAFDから救援要請が入る。そのためいつ連絡が入っても対応できるよう待機していなければならない。
出動要請があるのは主に児童虐待や銃撃、火事、殺人、交通事故、自殺、自然死などの現場。突然の悲劇に精神的ショックを受けている被害者やその家族に、メンバーは気持ちを落ち着かせ、精神的サポートを行う。
LA市のエリック・ガーセッティー市長は、同市で家庭内暴力やギャング関連の暴力犯罪が増加していることに触れ、「こうした犯罪や事件が起こった際、突然の事態に混乱する家族の精神的サポートは必ず必要になる。同プログラム参加者は世代や人種を問わず、被害者やその家族の心のケアを行い、市民の支えになってくれた」と労い、参加者一人ひとりに修了証書を手渡した。
エンターテインメント業界で働くアネ・ヴェキアームさんはインターネットで同プログラムを知り応募。「犯罪の被害者やその家族の苦しみを少しでも和らげてあげたいと思った」と話す。
研修中は事故で子を亡くした母親や両親を亡くした子どもたちをたくさん見てきた。「私たちがサポートするのは今まさに人生でもっとも辛い体験をした人たち。話す言語が違い、たとえ言葉が通じなくても、ただそばにいてあげるだけで苦しみを分かち合うことはできるのです」と力を込める。今後も犯罪被害者やその家族の心のサポートをしていくという。
同プログラムではスペイン、アルメニア、ペルシャ、中国語などバイリンガルの参加者を広く求めている。【吉田純子、写真も】