ピンポーンとチャイムが鳴ったのは宅配の到着だ。続けて2度鳴ると玄関まで来たよの合図。ドアを開けると「冷蔵品です。重いですよ」受け取ると、なるほどずっしりと両手に重い。早速みかん箱より少し大きめの梱包を開けるとなんと獲れたてのホタテがぎっしり。そういえば昨年も青森の家内の同級生からいただいた。数えてみると大ぶりのホタテが40数個も。昨年は近くの親戚や友人に配ったなあ。なにしろ生ものだからすぐに行動を起こさねば…。
生のホタテの処理方法はとインターネットで検索し、今回は取りあえず殻を開けるか、と二人でバターナイフを差し入れ貝柱を剥がす。貝の身になれば痛いのだろうね。ごめんねと中へナイフを突っ込むと貝殻をキュッと締め付ける。身は黒いところを除き貝柱とヒモの部分に分けて、みるみる二つのボールがいっぱいになった。早速新鮮な身を賞味する。お刺身も、スライスしてレモン汁とオリーブ油を振りかけてバジルを散らしたカルパッチョも甘くて美味しい。
夏にはお中元、暮れにはお歳暮と、日本にはお世話になった人に感謝を込めて贈り物をする風習がある。最近は談合予防や企業コンプライアンスの強化で官庁も企業も自粛ムード。しかし昔からこのような風習が日本の人間関係を保ち社会をかたち作ってきたことは間違いない。暑中見舞いも年賀状も面倒だとは思いながらももらうと嬉しい。普段ご無沙汰していてもその時期に送れば喜ばれる。やはり先人の知恵は深い。
北からはリンゴや食用菊の花、南からはマンゴーやミカン、丹精込めた有機野菜、見事なぶどうや梨が届きカリフォルニアからはサクランボが。
普段はもったいないと横目に見て通り過ぎるだけだが、贈られてくるものはその心くばりが加わって一段と美味しくいただく。6月も終わりに近づくとデパートからは分厚いカタログと共に昨年送ったリストが届く。今年は何がいいかなあと相手の顔を思い出しながら思い悩むのも楽しみの一つだ。
若い頃は無用な儀礼だと思っていたが、人と人との絆をつなぐ風習に「これも悪くないな」と思うこの頃である。【若尾龍彦】