消費大国、米国で暮らす日系人の家庭では、親子間でも物に対する考え方の違いが顕著に現れているようだ。
 日本で生まれ育ち、物心ついてから渡米した新1世は、物を大切に扱う習慣があるように思う。ある時、取材先で出会った新1世のご婦人は、食べ物を残して捨てることができず、外食で食べきれない時は必ずドギーバックがあるか尋ねるという。「私は戦前に生まれています。戦中、戦後は物資がなく、満足に食べ物も食べられなかった。私たち世代は豊かになった今でももったいなくて食べ物を残すことができないのです」
 一方、その婦人の子どもたちは、たとえ両親が日本人であっても米国で生まれ育ったがゆえ、食べ物や物に対する考え方がまったく違うという。例えばキッチンペーパーでも新1世のそのご婦人は水気を完璧に吸収するまで使うのに対し、米国生まれの子どもたちは少し使っただけで捨ててしまう。この光景には毎回驚かされるという。
 しかし近年、米国でもリサイクルの取り組みは活発化し、人々の物に対する考え方にも変化が現れてきている。先日もスターバックスが国内約7600店舗で売れ残った賞味期限切れの食品を生活困窮者に寄付すると発表した。廃棄食品を減らし、十分な食事を得られていない人々を救おうと、全米でフードバンクを展開する食料支援NPO「Feeding America」と連携し、5年間で約5千万食を寄付する予定だという。農務省(USDA)によると、米国では約5千万人、国民の6人に1人が十分に食事を食べられていない状態なのだ。
 世界全体では年間およそ13億トンの食料が廃棄されている。廃棄物が多くなればなるほど、農薬などの化学物質が無駄に使用されたことを意味し、食品が腐敗すると気候変動の原因ともなる温室効果ガスやメタンガスも発生し、地球にも悪影響を及ぼす。
 まだ使えるもの、食べられるものを捨ててしまうのなら、必要としている人に届けられたほうが人にも地球にも優しい。日本特有のもったいない精神や物を大切にする考え方は、地球の環境問題にも今後生かされてくるかもしれない。【吉田純子】

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