アカデミー賞で「幻のオスカー」となった「LA LA LAND」。日本でも公開されて早速見に行った。長回しで撮影された冒頭のダンスシーンは、何度となく車を走らせたフリーウエー。物語のカギとして描かれるグリフィス天文台。見慣れた景色のオンパレードで懐かしくなった。
 ロサンゼルスにいた頃はあちこち出かけたなぁと思いつつも、行かずじまいだった場所も数知れず。ダウンタウンにある人気の美術館「The Broad」もそのひとつ。家から歩いて10分だった。まさに灯台もと暗し、今は後悔している。
 冬の北海道、雪や寒さを売りにしたイベントが各地で開かれていた。有名なものでは、旭山動物園のペンギン雪中散歩、さっぽろ雪まつりにオホーツク海の流氷などなど。
 よちよち歩きの愛くるしいペンギンに見惚れ、巨大な雪像には圧倒され、遊覧船から見た海一面を覆う流氷の絶景に言葉を失う。水が入らないドライスーツを着て実際に流氷の上を歩いたり、海に入って流氷と一緒に浮かんだりもした。その写真や動画をソーシャルネットワークに投稿すると、世界に散らばる友人たちが驚くほど反応した。
 ところが北海道で生まれ育った「道産子」は、こうした冬のイベントにあまり行かないらしい。確かにあたりを見回すと、その多くが外国や本州から来たと思しき観光客ばかり。地元の人たちにとって雪や寒さは十分経験済みということなのか。「わざわざもっと寒いところに行って何が楽しいの?」という思いもあるし、「いつでも行けるから」と考える人もいるだろう。観光客が一番多く訪れる雪まつりの後はインフルエンザが流行る、という都市伝説もある。
 そこで暮らしている人にとっての日常は、初めて訪れた人や旅行者にとっては特別なもの、興味深いものに感じることがある。一方で、日々の暮らしを客観的に眺めてみたり、一歩離れてみたりすると、案外、これまで気がつかなかった良さを知ることもある。
 春は、始まりの季節。先入観を捨て街に出てみよう。見慣れた風景の中にも新たな発見があるかもしれない。出会いは一期一会、ロサンゼルスでの後悔を繰り返さないように。【中西奈緒】

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