今からおよそ400年前、「人生50年」といわれた時代に108歳まで生きた超人がいた。徳川家康の参謀として仕え、実はその正体が生き延びた明智光秀なのではないかという説もある僧侶・天海。彼は長寿の秘訣を聞かれた時、こう答えたという。「長命は粗食、正直、日湯、だらり、ときおり下風あそばされかし」。
 長生きをするにはまず粗食、正直に暮らし、毎日風呂に入り、のんびりと生き、時々おならくらいはしなさいという意味だという。江戸の都市計画にも関わったとされる彼は、長寿であったからこそ家康、秀忠、家光の徳川三代を陰で支え、さまざまな分野で活躍の場がめぐってきたのかもしれない。
 今、日本は長寿国として世界に知られる。先日、厚生労働省が公表した都道府県別の「死亡率」でもっとも低かったのは男女ともに長野県。ほか上位は男性2位が滋賀、3位奈良、女性は2位が島根、3位岡山という結果になった。
 長野県は都道府県別の平均寿命でも男性80・88歳、女性87・18歳と全国1位。かつて脳卒中などが原因で死亡率がもっとも高かった同県が日本一の長寿県となった背景には、県をあげての取り組みがあったという。
 山に囲まれ冬には雪害が多い同県は古くから保存食として漬け物などが親しまれてきた。塩分の多い食生活、脳卒中による死亡率の増加が問題視される中、いかにして日本一の長寿県になったのか。その陰には、行政だけでなく地域のボランティアも一丸となって、減塩に関する食生活改善計画を行ったことがあげられる。具体的にはみそ汁なら1日1杯、ラーメンならスープは半分残すことを推奨するなどの減塩運動を実施。こうしたことが功をなし、およそ30年かけて死亡率の低減や平均寿命の延びにつながったという。やはり食生活と健康的なロングライフは切っても切れない関係にあるようだ。
 塩分を控えた食生活、天海のいう粗食、日湯、だらりも日常的に簡単にできることばかり。何かと気を使うことが多い今の時代、「正直」に生きるというが一番難しいことなのかもしれない。自分は「だらり」に偏りすぎず、長命と健康のためバランスよく心得を実践していきたいと思う。【吉田純子】

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