7月18日、聖路加国際病院の名誉院長・日野原重明先生がお亡くなりになりました。105歳の大往生でした。100歳をすぎても現役の医師を続け、高齢者が活躍できる社会の在り方などについて提言を続けた文化勲章受章者の日野原重明さんは、東京大空襲の時には薬もなく、押し寄せる大火傷の罹災患者たちの治療にあたり、戦禍の悲惨さを体験しました。オーム真理教のサリン事件の時は、院長として直ちに一般患者の受付を中止し、無制限に患者を受け入れ640人もの治療にあたったそうです。
 「病気は日頃の予防が大切」を信念とし、脳卒中、心臓病などを生活習慣病と呼んでその克服を提唱。日本の医療行政に大きな影響を与えました。小学生から中学生をはじめ、対象を選ばずどこへでも出かけ、わかりやすい言葉で命の大切さを語った人でもありました。
 3年ほど前にパシフィコ横浜国立大ホールで講演があり、聴きにゆきました。確か当時は102歳だったと思いますが、約1時間以上、ステージの端から端まで歩き回り、大きな声で分かりやすく熱く語りかけてくれました。
 先月には、日野原先生が名誉院長を務めた築地の聖路加国際病院を見学したので感慨ひとしおです。ステンドグラスの美しい礼拝堂があり、病院棟には各階にたくさんの絵画が飾られています。患者には身体的な治療も大切だが、精神的・心理的治療も大切だと考えたのでしょう。多くの絵は患者や外部篤志家からの寄贈品です。
 ノーベル賞受賞者の北里大学・大村智先生が埼玉に作った「絵のある病院」北里メディカルセンター病院のコンセプトにも通じる病院です。大村先生の考えは「21世紀は科学や技術も大事だが、心を大事にする時代にしなければならない」というものでした。
 日野原先生は命の大切さを説き「命とは生きている時間だ」といった言葉が心に残ります。命を大切にするということは、生きている今の時間を大切にしろということだと解釈しています。憲法9条を誇りに思い、最後まで9条を含む憲法の改正に反対の姿勢を貫き通した信念にも敬服します。日野原先生のご冥福をお祈りします。【若尾龍彦】

Leave a comment

Your email address will not be published. Required fields are marked *