大都市シカゴを含むイリノイ州クック郡の人口は約530万人だが、毎年不動産税は間違いなく増税されているのに万年赤字財政は改善の兆しは見えず、解決法は市民から搾り取ることのみ。課税対象を何に絞るかで郡長官以下が頭を突き合わせて考えた結果、人身御供に上がったのがソーダ・タックス、つまりシュガーで味付けられたソーダ飲料(どういうわけかシュガーの含まれていないダイエット飲料もひとからげに含まれている)に1オンスに付き1セントが課税されるというもの。
 1缶12オンスのコーラに12セントが課税され、それが逼迫している郡の財政を潤し、役職員の退職後の年金も滞りなく支払えるという魂胆だが、政治家の悪知恵は増税の理由を「肥満児を減らし、市民の健康を守るため」、に置き換えようとしている。
 このアイデアはクック郡が全米で初めてというわけではなく他州などでも前例はあるそうだ。
 元ニューヨーク市長のマイケル・ブルームバーグ財団が250万ドルもの助成金をだしてイリノイ大学シカゴ校のパブリック・ヘルス部門に調査を依頼してこのアイデアを支援、不健康な飲み物に課税することで消費が減り、ひいてはシュガーの摂取による肥満や糖尿病などの成人病が減る。医療費を節約すれば保険料も下がるだろうという三段論法で市民に増税を納得させようとしている。
 肺がんの元凶といわれるタバコが増税で一箱2ドルくらいから8ドルだの10ドルになって久しい。
 私自身もう何年もソーダ飲料は飲まないし、シュガーが健康に悪いこともよく分かっている…つもり。
 タバコもアルコールも好みではないからこの手の増税は痛くも痒くもないし、子供たちに「こんな高い飲み物はわが家では買えないのだ」と説得するより健康に悪いのだという方が親としては確かに話しやすい。
 しかし、もしこの増税対策が成功してソーダ飲料の消費が減ったときは、郡の歳入も間違いなく減るわけで、政治家たちはまたまた次の増税案を考えねばならないし、ソーダの万引きが増えるのではないかと余計な心配もしなければならない。不健康な話である。【川口加代子】

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