2017年もあと10日、実にさまざまな事件があった年でした。中でも森友・加計学園に関する与野党の攻防や、日本製品への信頼を揺るがしかねない相次ぐ大手企業の不祥事は、政府や大企業への不信感を国民に与え、日本の指導者層のモラルの低下が懸念されます。戦後72年、新生日本として出直したはずの日本が、もしかしたら大きく変わりつつあるのでしょうか。過去の失敗を歴史から学び、将来の発展の糧にするのは、人類の貴重な体験財産です。西側諸国では、そのためにさまざまな工夫が凝らされ、チェックシステムを作り上げて来ました。米国における特別検察官制度や各種の弾劾制度、機密情報公開制度などはその一例だといえるでしょう。組織は、トップが長期に権力を握ると内部は徐々に硬直化してやがて衰退に向かいます。歴史の評価は100年経たないと本当の評価は固まらないといわれています。事実の記録保管は後世への大切な義務だといえます。
 日本の歴史教育は、もっとも大切な直近の歴史教育がなおざりにされているといわれています。小説家の司馬遼太郎氏は、何年もかけて丹念に資料を集め、多くの関係者にインタビューして、日露戦争史ともいえる「坂の上の雲」を書き上げました。司馬氏によると、日露戦争で勝利した日本は、その正確な戦史が残せず厳密な検証が行われなかった結果、日本の軍隊は精神主義と神話に彩られるようになり、合理性に裏打ちされた戦略や軍備ができず、やがて太平洋戦争の大悲劇を国民にもたらしたと嘆いています。その原因が、戦後の論功行賞で上層の軍人や官僚が口々に自分の手柄を言い立て、意味ある戦史が書けなかったからだと指摘しています。
 組織は、長期政権が続いたり、会社でも絶対的な権力者が続くとひずみが生じます。例えトップの当事者にそのつもりがなくても、周囲に忖度や追従行為がはびこり合理的な判断を誤らせるのでしょう。もしかして2017年はその兆候だったのか。大企業や政府の運営は事実をありのままに記録し合理性に基づいて運営されているか、2018年はそれを見直す年になってほしいものです。
【若尾龍彦】

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