屋外からの明るい日差しに照らされた会場に司会の大月ケンさんによる開会の辞が響いた。この50年を振り返り、思い出を心に刻むようにそれぞれが黙とうを捧げる。続いて、日本国風流総師範、豊田国鋒さんによる祝吟、坂東流日本舞踊師範、坂東秀十美さんによる祝舞が披露された。
南加日系商工会議所会頭の山﨑一朗さんは、「大正クラブが解散すると知って驚いている。大正生まれの人たちの心のオアシスとして始まったこのクラブの精神は、形態が変わっても日系社会に受け継がれていく。新たな出発と思いたい」と述べた。
日系社会の医療分野にボランティアで奉仕する医師や看護師、医療関係者らで構成される非営利団体「日系医療協会」(JCHA)から、マエダ医師が代表であいさつに立った。
このほか来賓祝賀として、在ロサンゼルス日本総領事館の松尾浩樹首席領事と南加県人会協議会副会長の水谷ハッピーさんも順に登壇し、50年にわたる日系社会への貢献に謝辞を述べた。
大正クラブで会長経験のある菊地日出夫さん(95)も白神さんとそろって座った。加州ストックトン生まれで収容所経験もある菊地さんは、長年「米国版カラオケ紅白歌合戦」で実行委員長を務めた。同クラブの芸能部で活躍し、日系社会を盛り上げてきた功労者でもある。白神さん、菊地さん二人は大正クラブの法被を着て記念撮影し、終始にこやかに友人との再会を楽しんだ。
食後、スクリーンに活動を記録した映像が流れ始めると、会場からは時折、笑い声や驚きの声、当時を懐かしむような声が聞こえた。ゴルフ、ダンス、旅行、映画、盆栽、釣り、愛石、カラオケ、そして健康フェア。どの画像にも真剣なメンバーの表情や笑顔、活発な活動風景が映し出されている。
「明治110年を記念して作られた会も、3月末をもって活動の幕を降ろす。できることなら最後の会長にはなりたくなかった。とても切ない決断だったが、今日を大正クラブの『卒業式』とすることで、また明るい未来がやってくるのでは」杉山会長は最後の最後のあいさつでこう語り、「卒業生代表」として日系諸団体に謝辞を述べた。
この後、鈴木博久顧問が、同クラブ代表で杉山会長に感謝状を贈呈した。サプライズを受けた杉山会長はユーモアで対応し、会場は和やかな雰囲気で50年最後の祝賀会を終えた。
すべての日程を終了し、一息ついた杉山会長は寂しいながらもホッとした表情で取材に答えた。「時代とともに会員の高齢化が進み、それに伴いボランティアも減少、健康フェアの場所の確保や保険など、問題が多い中で継続は不可能と昨年夏に決定した。年末の総会で大正クラブを終了することも承認され、3月をもって解散となる」
日系のパイオニア団体が一つ姿を消す。大正クラブの大いなる意志を継いで、健康フェアやボランティア活動を引き継ぐことができる団体が新たに登場するよう、望む声はやまない。【麻生美重】