先ほどから、何度も電話のメッセージを聴き直している。
 「折り返し電話をください」というのだが、メッセージに残された電話番号の最後の二桁の番号が聞き取れない。それらしい番号で何度かかけてみたがいずれも間違い電話。
 知っている人ならリストから調べてかけることも出来るが、未知の人ではそれもできない。
 散々時間を費やした後で、もう一度かかって来るのを待つ以外に方法は無い。
 それまで普通に話していながら、電話番号を残す段になると、なぜか急に早口になる人がいる。そうかと思えば語尾が消えて、聞き取れないこともよくある。
 中には電話をかけてくれと言いながら、番号を残さない慌て者がいたり、自分の番号が分からなくなって笑い出す人がいたり、エリアコードだけが日本語で、その後は全部英語というのもある。
 突然用件から入って、名前も番号も残してくれない人もいたが、偶然声に聞き覚えがあったので、まぐれでかけ直したら大当たりだったこともある。
 聴き取りにくいのがゼロと4、英語ではオーと言ったり、フォーと発音するが、「オーですか、フォーですか」と確認することもしばしばである。
 それでも番号も名前も二度繰り返して残してくれる人もいる。多分この人は、メッセージが聴き取れずに困った経験の有る人だろうと、勝手に納得して感謝している。
 日本人の聴覚しかもっていない私には、英語の珍しい名前が聴き取りにくいこともしばしば。そんな時、丁寧にスペルで繰り返してくれるのは有難い。
 「××ですけど…」と先ず自己紹介をして、それから数分自分の近況などしっかりしゃべって、「ついでの時にお電話ください」と切れたメッセージがあり、一体何が知りたいのか要領を得ない。
 「ついでの時」ってなんのついでだろうか。忙しさも手伝って返事を返さなかったら、「昨日メッセージを残したんですけどね…」と電話を返さなかったことを恨みがましく言われて、なんで私がと思いながら「すみません、バタバタしておりまして」と謝って許してもらった。
 ヤレヤレ。【川口加代子】

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