「孤独との付き合い方」に関する書籍が空前のブームを呼んでいる。
 昨年7月に発売された五木寛之氏の『孤独のすすめ』は30万部を突破。下重暁子氏が今年3月に出した『極上の孤独』は27万部も売れている。
 出版業界が長い知人によると、読者層は60代以上が中心で、「家族に囲まれ一見、幸せそうな人」や「老後、多くの友達と交際し、精神的にも満たされているように見える人」が意外に多いという。
 つまり、「私に限って孤独などとは無縁よ」と強がっている人ほど「孤独本」を読んでいるということらしい。
 老境に入れば、誰しもが直面するのは「孤独」といかに向き合うか、だ。
 孤独だと感じるか、感じないかは別にして、人はみな独りで生まれ、独りで旅立つ。
 生まれ育った日本に住む日本人ですら「孤独」とどう向き合うかについてこんなに思い巡らしているのだから、異郷の地に移り住んだ日本人にとってはなおさらの命題かもしれない。
 「寂しさ」を忘れるために宗教や趣味に逃げるのも手(方法)だし、同胞同士の会合で紛らすのも手だ。が、真夜中、目が覚めた時、暗闇の中で襲ってくる、あの「寂しさ」はそう簡単に去りそうにない。ふり払ってもふり払っても付きまとって離れない。
 下重氏は、こう助言している。
 「『孤独』と『寂しさ』はまったく別物です。『孤独』を愉(たの)しんでください。『孤独』を愉しむことを知っている人は、一人でいる時間に喜びを感じ、人生をより愉快に過ごせるはずです」
 そうだろうか。で、具体的にはどうするのか。
 「独りで自分自身と向き合い、自分を知る努力をすること。自分に興味を持つこと」
 「寂しさ」から自らを解放する切り札は自分自身でしかない、ということらしい。【高濱 賛】

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