「生まれた時から肌の色や出自や宗教を理由に他人を憎む人などいない―」。バージニア州シャーロッツビルで昨年8月に発生した白人至上主義グループと反対派との衝突事件。前述の言葉は、1人が死亡し多数の負傷者が出る事態に発展したこの事件を受け、オバマ前大統領がツイッターに投稿したメッセージだ。
 アパルトヘイト(人種隔離)と闘った南アフリカの故ネルソン・マンデラ元大統領の自伝「自由への長い道」の一節から引用したもので、ツイッター史上最多の「いいね」数(現在までに460万人以上)を獲得した。
 人種差別に関するニュースは日に日に多く目にするようになったと感じる。先月、ニューヨーク州マンハッタンのレストランで、客として訪れていた白人の弁護士がスペイン語を話す従業員に、「スペイン語ではなく英語を話すべきだ。ICE(移民税関捜査局)に連絡するぞ」などと暴言を吐いた。この弁護士はその後、実名が割り出され、自宅前では抗議運動が起こるなど、連日メディアから追われる身となった。
 昨年12月、北カリフォルニアのウォールナットクリークのスターバックスでも同様の出来事が起きている。白人の女性客が2人のアジア人学生に「ここはアメリカ。英語だけを使って」と言い放った。この女性の言動に店員は「当店ではどんな言語で話しても構いません。彼らに問題はありません。問題なのはあなたです」と告げ、店から出るよう促した。応じなかった女性はそのまま警官に連行された。
 リバーサイド郡のコーヒービーン&ティーリーフでは先月、白人の男性客がニカブ(イスラム教徒の女性が着けるベール)を着けた女性に差別的な発言をし、店の支配人はこの男性に商品を提供することを拒否した。一連の出来事は一部始終を動画に収められており、その後フェイスブックなどに投稿され、瞬く間に拡散。多くの人に知られることとなった。
 人はいつから肌の色や人種で人を憎むようになってしまうのだろう。「生まれながらに人を憎まず―」。人種差別の撲滅を訴えたこの言葉がすべての人の心に届く日は来るのだろうか。【吉田純子】

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